リーマン・ショック以来、閉塞感を打開できない日本の地方経済。成長を続ける新興国とのダイレクトな結びつきこそが地方再生の道、と筆者は説く。
現在の不況と世界大恐慌の共通点と相違点
2008年9月のリーマン・ショックに端を発した世界同時不況が長期化するなかで、日本の地方経済は疲弊の色を濃くしている。別表は、日本銀行が3カ月ごとに発表する「地域経済報告」(いわゆる「さくらレポート」)の地域別景気判断を、07年1月~10年1月の時期について一覧したものである。
この表からは、(1)「いざなぎ超え」の長期好況が終わった07年11月の少し前から、いくつかの地方で景気後退が始まった、(2)08年にはいると、景気後退は全国に広がった、(3)08年9月にリーマン・ショックが起きると景気後退はきわめて深刻化し、地方経済は危機的な状態に陥った、(4)09年半ばにようやく景気は底を打ったが、「2010年1月の評価」の欄からわかるように、現在でも、大半の地方は不況から脱け出ていない、などの事実を読み取ることができる。
リーマン・ショック以来の世界同時不況に関しては、「100年に一度の経済危機」とみなす見方が、支配的である。そう評価されるのは、81年前の1929年に起こった世界大恐慌を想起させるからである。たしかに、現在の世界同時不況と29年の世界大恐慌は、アメリカを発信源としている点で共通している。しかし、今回の同時不況が、2つの点で大恐慌とは異なっていることも、見落としてはならない。
第一は、アメリカで金融危機が発生してから世界経済全体へその影響が広がるまでのスピードが速かった点である。これは、ヨーロッパの金融機関がアメリカ発のサブプライムローン問題に深く関与していたこと、新興国が先進国向け輸出にウエートをおく形で経済成長をとげていたこと、などによるものである。つまり、大恐慌が起こった81年前と比べて、今日では、世界経済の連関が、はるかに緊密化しているのである。
第二は、「巨大化した国際金融資本市場の混乱と世界的規模にわたる銀行システムの機能不全による金融危機が、現在の景気後退に強く影響している点である」(08年12月発表の内閣府政策統括官室[経済財政分析担当]「世界経済の潮流 2008年II」)。これは、大恐慌と異なるだけでなく、70年代に生じた二度の石油危機とも異なる事実である。08年に発生した世界同時不況について、それが長期化するという懸念が強まっているのは、景気の後退と金融システムの混乱とが絡み合っているからである。