東京はNYの2倍の「本社」を持つ一極集中都市

おいしい食べ物や飲み物は、日本人観光客だけでなく、中国人観光客や韓国人観光客にとっても、大きな魅力である。その意味で、第三次産業における地方と新興国との結合は、第一次産業におけるそれと密接不可分に結びついている。中国産の一次産品が日本市場に深く浸透している現状は、見方を変えれば、日中間に大きな物流上の障害がないことを意味する。この物流の向きを逆行させれば、日本産の一次産品を、中国沿海部に送り込むことができる。中国沿海部の富裕層が、価格は高くとも、安全・安心でおいしい日本の農産物や水産物を堪能する新しい時代が、徐々にではあるが、すでに始まっているのである。

アメリカの「Fortune」誌が毎年発表する世界トップ企業500社ランキングの2006年版には、トップ500企業の国別分布とともに、それらの本社の都市別分布も掲載されていた。そのデータによれば、国別分布で、70社の日本は、170社のアメリカに大きく引き離されて2位であった(3位は38社のイギリスとフランス)。しかし、本社の都市別分布では、52社の東京が、2位のパリ(27社)、3位のニューヨーク(24社)、4位のロンドン(23社)に大差をつけて、トップを占めた。この事実は、欧米では地方(地元)に本社を置くケースが多いのに対して、日本では東京一極集中が進んでいることを、如実に示している。

地方再生を実現するうえで重要なことは、地域経済が世界市場と直結することである。そのとき、あいだに東京という「中央」を介在させる必要はない。現在、日本の政治の世界では、中央と地方との関係が大きな問題になっているが、経済の世界から見れば、そのような議論はやや視野が狭すぎると言わざるをえない。いちいち中央を介することなく、地方が直接に世界の成長市場と結びつくこと……今や、そのような大胆さとスピードが求められる時代が到来しているのである。

(平良 徹=図版作成)