新型コロナウイルスの影響で自動車業界は危機にある。だが、トヨタ自動車だけは直近四半期決算で黒字を計上した。なぜトヨタは何があってもびくともしないのか。ノンフィクション作家・野地秩嘉氏の連載「トヨタの危機管理」。第4回は「社員の外出自粛」——。
トヨタ自動車の入社式であいさつする豊田章男社長(壇上左から2人目)。同左端は内山田竹志会長=2015年4月1日、愛知県豊田市の同社本社
写真=時事通信フォト
トヨタ自動車の入社式であいさつする豊田章男社長(壇上左から2人目)。同左端は内山田竹志会長=2015年4月1日、愛知県豊田市の同社本社

平熱より1度高くても上司に報告する

トヨタが行った生産現場での新型コロナ危機対応は、前回とりあげた。

トヨタの国内従業員の総数は約7万2000人。このうち、生産現場にいる技能職は4万3000人、事務部門の事技職は1万5000人で、事務部門の人々をサポートする業務職が4000人。加えて、課長級以上の基幹職・幹部職が8500人となっている(2020年8月現在)。

それでは事務部門の職場では、どんな対策を実行しているか。簡単にまとめておく。これまた、事技系職場の人数が多い会社では参考になる。

会社全体の対策
1 手洗い、咳エチケット、出勤前と帰宅後の検温記録をすること。発熱したら上司にすぐに報告する(37.5度以上もしくは平熱よりも1度高い場合)。
2 行動履歴の記録と管理の徹底。コロナ接触確認アプリ「COCOA」の積極的な活用を推奨する。
3 各施設に入場する前に消毒液を設置する。
4 食堂などの共有施設における対面着席を廃止する。席数を削減し、誰がどこに座ったか、着席場所を記録する。
5 拠点間を運行する社内バスの席数を半減する。車内では飛沫が飛ぶから飲食は禁止で、会話も抑える。換気を実施し、車両の消毒も欠かさない。
6 全従業員と家族に対してマスクを配布する。ひとりあたり、1日に1枚の計算となっている。
事技系職場
1 一定の目標値を定めて、在宅勤務、勤務場所の変更をする。
2 各席における飛沫防止パネルの設置。
3 時差出勤、部分的な在宅勤務を行う。

たとえば、広報部などは役職者も含めて半数は在宅勤務だった。在宅勤務については別稿で詳しく述べるけれど、東京本社は今も閑散としている状態だ。