地方は「針の穴」のようなマーケットに最適化せよ
どこにでもある多目的施設には、競争力もありません。地方に関していえば、弱みしかない。なぜなら、巨大で利便性の高い立地にある施設の方が優位になり、地方に行けば行くほど都心より小さく不便な場所にある施設となるからです。
本来は人の少ない地方ほど、その地域だから可能になるような施設造りに取り組む必要があります。万人受けよりも、限られたマーケットに特化し、そこで評価される。しかもその地域だからこそできる作戦をとるべきなのです。そのような針の穴のようなマーケットに最適化し、競争優位を築く方法を私は「ピンホールマーケティング」と呼んでいます。
そのような視点にもとづき、都心より地方だからこそ強みが生きる分野として今急速に伸びているのが「サウナ」市場です。
なぜ、サウナが地方活性化に効果的なのか
一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所の「日本のサウナ実態調査2020」によると、日本には月1回以上サウナ浴をする“ミドルサウナー”は推計651万2000人、月に4回以上サウナ浴をする“ヘビーサウナー”は推計342万人で、年1回以上の“ライトサウナー”は約2761万人と推計されています。
ここ数年、「サ道」といったドラマ、さらにビジネスパーソンをターゲットにしたサウナ関連書籍が次々と出されています。その影響もあって、おじさんたちが熱さに耐えるような従来型のサウナから、自律神経を整えるリフレッシュツールとしてのサウナへと変貌を遂げてきました。特に若い世代や経営者層が、そのようなメンタルヘルスを意識したものに注目しています。
彼らは「サ活」といって日常的にみんなでサウナに入り、そこで出会った友人たちを「サウナフレンド=サフレ」と呼んで交流します。さらに地方にあるサウナに入るために旅をする「サ旅」というものまで登場しています。
サウナを日常的に楽しむという「ピンホール」の層に絞り込むと、実は地方が都心よりも優位な理由がいくつも出てくるのです。すでに都心から地方へのサウナを軸にした人の流れができつつあり、地域活性化の大きな要素となってきています。