岸田ファミリーの女性が選んだ産院は「分娩費用100万円超」か
候補者のひとり、岸田氏は「広島県出身」とされるが、実際は「祖父の代から国会議員、本人は本籍のみ選挙区に置いて、東京生まれ東京育ち」という典型的な自民党世襲議員である。
今回の「出産費用ゼロ」に関しては、菅氏の「不妊治療保険適用化」発言が話題になっているのを知って、あわてて追加したという印象が否めない。周囲の女性に「少子化対策でアピールしそうな提案ない?」と質問して、「出産費用が高いよねぇ」と答えたのを、そのまま取り入れてしまったのではないか。
しかし、岸田氏の周囲にいる女性たちは「分娩費用100万円超」のセレブ産院をイメージしていたかもしれない。そうなれば、一般的日本人女性の経験とは乖離してしまう。岸田氏の選挙区である広島県の平均分娩費用は48万7000円であり、各種の手当金を併せれば「出産費用ゼロ」は事実上達成されていると言えよう。
参考)公益社団法人国民健康保険中央会「正常分娩分の平均的な出産費用について」(平成28年度)
昨今、有名人の高度不妊治療による出産ニュースを耳にする機会が増えている。例えば、
「石田純一・東尾理子夫妻が体外受精で3子」
「夫が無精子症で顕微授精により出産したキンタローさん」
「海外での提供卵子によって50歳で出産した野田聖子代議士」
「ロシアで代理母出産の有村昆・丸岡いずみ夫妻」
わが国の体外受精件数(顕微授精を含む)は増加の一途をたどっており、2019年に日本産婦人科学会が公表したデータによると、2017年に日本で生まれた赤ちゃんのうち約5万7000人が体外受精によるもので、ここの年に生まれた子どもの「16人に1人」に相当している。
疲弊する現役世代、のしかかる高額費用、遅すぎる行政対応
平成時代の約30年間、日本人30~40代の平均年収は300万~400万円台のままで、他の先進国や新興国のように伸びなかった。しかしながら、社会保険料の増加・消費増税など現役世代の負担は増え続ける一方だった。
1本数十万円の抗がん剤(主に高齢者向け)はあっさり健康保険の適応になることが多い一方で、1回分のコストが20万~60万円の体外受精は「不妊は病気ではない」という理由によって、今なお健康保険の適応にはなっていない。少子高齢化が問題視されて久しいにもかかわらず、「不妊治療費を捻出しきれず挫折」「きょうだいが欲しかったけど1人が限界」というカップルは珍しくない。
2020年6月、政府は「全世代型社会保障改革の中間報告案に、不妊治療への保険適用の拡大を盛り込む」と発表したが、「人口の多い団塊ジュニア女性が45歳を過ぎた今頃になって、遅すぎではないか」と感じた。ただ、もちろん今後のことを考えれば「遅くてもないよりまし」である。