「少子化対策」が争点になっている自民党総裁選の行方
安倍晋三首相の後継者を決める自民党総裁選(9月14日投開票)を控え、出馬した3氏は支持拡大に向けたアピールを活発化させている。
少子化対策として菅義偉官房長官が「不妊治療への保険適用」に言及して話題になったが、すかさず岸田文雄政調会長も「(出産費用の)負担をゼロにするべく、国として支援をする」と表明した。
2019年、日本の出生数は86万人。前年比マイナス6%という急速な少子化局面を迎えており、2020年はコロナ禍もあって、これがさらに進行するのは必至と見られる。
少子化対策の重要性そのものは3氏とも意見が一致しているが、具体的な方法としては「不妊治療保険適用化」と「出産費用ゼロ」、どちらが効くのだろうか。
出産費用はすでに「タダ同然」
妊婦はほとんどが病院で出産する。しかし、「正常分娩は病気ではない」という理由で健康保険の対象ではない。ただし、日本には国民皆保険制度があり、健康保険に加入した女性が出産すると、出産育児一時金として42万円(双子は2倍)が支給される制度がある(これは所得ではないため、課税対象外)。
また正常分娩は自由診療なので「分娩料金」は病院がその料金を自由に設定できる。全国平均では50万6000円であり、都道府県別では島根県が平均39万6000円と最安値、東京都は62万2000円と最高値である。
東京都内は地価や人件費の高騰もさることながら、「御三家(愛育病院、山王病院、聖路加国際病院)」などの高額ブランド産院が平均価格を引き上げている。例えば、聖路加国際病院は出産費用の目安としてウェブサイトに「105万円~115万円程度。無痛分娩は別途15万円」と記している。
とはいえ、東京都内にも庶民的な分娩施設は存在する。都立病院で相部屋利用の場合ならば、「40万~50万円」レベルの出費で収まる。さらに「産前産後の社会保険料免除」「出産手当金」「確定申告時の控除」などを併せて考えれば、地方や都内の庶民的施設ならば、現在でも分娩費用そのものはタダ同然といってもいい状況である。