「健全な関係づくり」より、中国の軍拡を止めることが必要

朝日社説は書く。

「この8月、南シナ海に複数の中距離弾道ミサイルを発射したことは強く非難されるべきだ。米領グアムまで射程に含むため『グアムキラー』と呼ばれる新型兵器などと伝えられる」
「これまで中国は、南シナ海で他国が領有権を唱える岩礁などを埋め立て、軍事拠点にしてきた。過去の約束や国際法に反する行為を、国際社会は見過ごすわけにはいかない」

冒頭で沙鴎一歩が指摘したように対空母の弾道ミサイル発射こそ、批判の対象であることは間違いない。そればかりか、ここ数年の中国の軍事行動は異常としか思えない。

朝日社説は主張する。

「両外交当局も非難のトーンを高めている。とくにトランプ政権は11月の大統領選を意識して中国共産党体制を批判し、それが米軍の動きにも反映しているとみられている」
「政治の思惑で軍事的な事態の悪化を招くような行為は、厳に慎まなければならない」

トランプ政権の言動が米軍の行動に影響しているとしたら、米中の軍隊の偶発的衝突など事態の悪化もあり得る。偶発的衝突に対する警戒は欠かせない。ただし忘れてならないのは、まず批判されるべきは中国ということだ。確信犯である朝日社説の書き方は頼りなく、そこが分かりにくい。

最後に朝日社説はこう指摘している。

「米中の覇権争いは長期に及び、両国関係のあり方は世界の未来に直結する。双方に近い主要国として、日本は米中の健全な関係づくりに寄与する外交が求められている」

「米中の健全な関係づくり」もいいが、やはりその前に中国の強引な軍拡を止めることが肝要である。

日米は同盟に隙が生じないように警戒を強めるべきだ

次に9月1日付の読売新聞の社説を読んでみよう。

「中国の海洋進出 日米同盟強化で力の空白防げ」との見出しを掲げ、書き出しから「日米両国の政治体制が今秋、節目を迎えようとしている。アジアに『力の空白』を招かぬよう、安全保障協力を積み重ねることが重要だ」と訴える。

読売社説は日米の政治体制が新しくなる過程で、中国の軍事行動がますます強まることを懸念している。

読売社説は後半で「安倍首相が退陣を表明し、米国では11月に大統領選が行われる。政治が不安定化すれば、紛争の危険性が高まりかねない」と指摘する。そのうえでこう主張する。

「日米両国は、同盟に隙が生じないよう、警戒を強める必要がある。閣僚や次官級、制服組などが重層的に協議し、不測の事態に備えることが大切だ。中国に自制を促し続ける努力も不可欠である」

読売社説が主張するように、警戒の強化や備えは必要である。中国という国は相手国の隙に付け込むからだ。