営業の際にプレゼンの資料に不備があったり、相手先の情報の下調べが不足していたりすると、心にひるみが出て、もう一押しがきかない、ということになりかねない。達人たちはどう切り抜けてきたのだろうか。
横田雅俊さんは、プレゼンの準備不足は問題ではないという。
「プレゼンの準備を完璧にやろうとする人がいます。うちはこんなにすごいんだという資料を準備するわけですが、それはまったく意味がありません。むしろ面談の目的は、相手がほんとうに大事にしているものとか、何を考えているのかということをヒアリングすることですよ。それを聞き出して、相手が1番ほしいものをうちは提供できるんですよとアピールするだけでいい。ですから1時間の面談時間があるとすると、私は50分くらいずっと質問しているんです」
横田さんが最小限のプレゼン資料としてすすめるのは、「ゲリラツール」と呼ぶ資料だ。
「自分の会社の売りになる部分、ユニーク・セールス・ポイントを7~8個書き出して、その他大勢の会社との客観比較をしたものです。最後の10分のうち5分間をプレゼンの時間にあて、セールスポイントの中で1番お客さんの心にヒットしそうなものを一個だけ説明して、次の5分間で次回の約束をする。それくらいのツールは、常に用意しておくといいと思いますね」
質問項目をリストなどの形で準備しておくことも必要である。
「営業の面談では、通り一遍の質問ではなく、『なぜ、今回、私どもにお問い合わせいただいたんですか?』『どういうことを一番の目的にしていますか?』というような相手の意図とか目的、考え、理由を聞く質問が大事なのですが、そのような質問は、その場ではなかなか出てこないんです。ですから、そういうときのための質問の準備はしておかなくてはいけませんね」
(談=川本 裕子、箱田忠昭、枝廣淳子、丸山 学、横田 雅俊、堀 義人)