将来、経営に参画するのであれば会計も必須だ。「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」の財務三表は読めるようにしたい。そのとき留意すべきはテキストの選び方だ。

「公認会計士や税理士が著者になっている本には、財務諸表を作成する側からの視点で書かれているものがあります。経理や財務の部門ではなく、経営の助けとして会計を学ぶなら作成するための知識や技術は不要です。あくまでも“読み方”を教えるスタンスで書かれている本を選んでください。簿記学校に通って簿記のつけ方を学ぶ必要もありません」

財務諸表は読み方がわかれば十分

小宮氏は現在5社の社外取締役を務めているが、財務諸表は読み方がわかれば十分だという。入門書で構わないので財務諸表の見方を学び、そのうえで自社と取引先2、3社の決算短信を読み解いてみる。

「たとえばキャッシュフロー計算書もどこで稼いで、どこで使うかがわかればいいわけで、入門書を2~3時間読めば理解できます」

また40代は部下が増え、チームのメンバーをリードする立場にもなる。自らの人間力やリーダーシップが問われる場面がぐっと多くなるはずだ。

「人間力を高めるためには孔子の『論語』や老子といった中国古典や仏教書がおすすめです。論語は義を説き、仏教は利他を説きます。中国の古典も仏教も全体のために自分が何をすべきかを考えるよりどころになるので、リーダーシップとは何かを学べます」

加えて松下幸之助氏や稲盛和夫氏のような大経営者の本からも得るものは大きいという。

「お二人とも人間としての正しい考え方や生き方を突き詰めています。稲盛さんの言葉を借りれば、ビジネスは人生の一部だから人生が成功ならばビジネスも成功することになります」

成功した経営者からは経営手法だけでなく、本物のリーダーシップや成功するための人間観を学ぶことができる。ただし、頭で理解するだけでは不十分だと小宮氏は指摘する。

「リーダーシップは実践あってこそ本物です。戦前、海軍兵学校ではリーダーのあり方として『指揮官先頭』が強調されました。つまり、リーダーは先頭に立って行動せよと。そして責任を取れと。人は理屈ではついてきません」

先頭に立つ覚悟と責任を取る覚悟。2つの覚悟を持って実践する人がリーダーの器にふさわしいのだ。

「頭の良い人は『イザとなればリーダーとして立派な行動が取れる』と思いがちです。しかし、普段できないことはイザというときにもできません」

40代は小さな組織のリーダーとなって部下を動かす機会が増える。常日頃から指揮官先頭を心して行動し、部下がついてくるリーダーを目指したいものだ。