自分で決めれば、納得できる

【田村】最近は、子どもだけでなく、親たちも、何かを決めることを放棄していることがあります。

【小泉】そうかもしれません。自分で決めれば、納得できる。いまでもこの思いは強く持っています。何かに悩んで決断を下すときは、必ず自分で決める。時には相談しないほうが良いこともあると感じています。

【田村】確かに政治家は、最後は自分で決めなくてはなりません。私は橋本氏の他、野中広務氏や小沢一郎氏ら多くの政治家に仕えてきました。また、自社さ連立政権のときには、社会党の村山富市総理のサポートもしました。多くの議員から、主に政策や法案の件で相談を受けました。いま振り返ってみると、大物であればあるほど、最後は自分で決めていたように思います。

進次郎さんが最後は自分で決めるというのは、約3年間にわたってアメリカで生活した影響もあるのでしょうか? そういえば、純一郎氏は進次郎さんに「孤独を大切にしろ」といわれていたのですよね?

【小泉】私にとって初めての一人暮らしがアメリカでの生活でした。周りには家族もいない、友人もいない、親戚もいない。おまけに言葉も通じない。だから最初は大変でしたよ。料理や洗濯も自分でしなくてはならないし、日本だったら当たり前にできることも、言葉の壁があってなかなかできない。ただ、そういった環境の下で生活することで、成長したのは間違いないですね。

【田村】その経験があるから、自分のことを自分で決められるのですね。

政治家になって失った「大切なもの」とは

【田村】そのほかに、普段の生活で大切にしていることはありますか?

【小泉】自分と向き合うこと。自分と向き合わなければ、毎日が無思考のまま過ぎ去ってしまいます。だから毎日、いかにして自分の時間を作るかを大切にしています。特に政治家になってから、放っておくとどんどん予定が埋まっていきます。すると、予定をこなすだけの毎日になってしまう。だから「予定を入れない」「人と会わない」ことも大切な仕事なのです。

【田村】橋本氏とお父さん(小泉純一郎氏)は、夜の会合は一日一件しか行かないことで有名でした。自分の時間を確保するためです。これによって「あいつは付き合いが悪い」と陰口を叩く人もいます。確かに政治家には付き合いも必要です。しかし、付き合いを重視して身体を壊してしまうのでは本末転倒です。橋本氏はどんなに忙しい時期でも、大好きな推理小説を読む時間を取っていました。