安倍首相は「国民の気持ち」をまったく理解できていない

問題は安倍政権の視野の狭さにある。たとえば「アベノマスク」だ。安倍首相は8月1日、連日着用していた小さい布マスクを止め、鼻から顎まで覆う大きなマスクを着けて首相官邸に入り、記者団を驚かせた。翌週3日の月曜には、その理由をこう語っていた。

「現在、お店でもいろんなマスクが手に入るようになりましたので。これも布製マスク。ぜひ国民の皆さまにも外出時にはマスクを着用していただくなど、感染予防に協力をお願いしたい」

「いろんなマスクが手に入る」ことは、自身のマスクを変更したこととどう結び付くのか。ロジックはよく分からないが、「アベノマスク」が国民から支持されていないことをさとったことは間違いなさそうだ。しかし、それをさとるには遅すぎる。

「アベノマスク」は購入と配達の費用でざっと260億円がかかったという。配布も遅れた。国内だけでなく、海外のメディアからも効果が疑問視された政策だ。そもそも格好の悪い小さなマスクなど、だれが欲しがるのだろう。安倍首相は私たち庶民の気持ちをまったく理解していない。要は世間の事情に疎いし、視野が狭いのである。

対中外交を強腰に変えるには「首相の決断」が欠かせない

話を中国に戻そう。中国の強権的行動は香港だけではない。東シナ海や新疆(しんきょう)ウイグル自治区でも目に余る行動を続けている。そのうち日本にも波及する。もはや対岸の火事では済まされない。私たち国民の多くもそう感じているだろう。

尖閣諸島の問題を考えれば、その帰結は明らかだ。このあたりで習近平政権にしっかりと釘を刺しておく必要がある。

しかしながら、安倍首相は視野が狭く、国民の気持ちが分からない。中国政府に対し、「香港から自由を奪うのは国際的ルール違反だ」と正面から忠告することなど頭の片隅にもないだろう。そんな安倍首相を中国政府も見下しているに違いない。

これまでの安倍政権の外交は中国に対し、弱腰だった。それを強腰に変えるには、大きなテコがいる。そのテコとは、安倍首相自身の決断である。安倍首相はそこに気付いていない。このまま気付かずに政権を終えるのだろうか。沙鴎一歩は国民のひとりとしてそれが残念でならない。