世帯収入564万円でも対象になり得る

次に共働き世帯の4人家族の事例で考えてみる。両親と本人、高校生のきょうだいがいる世帯で、お父さんがサラリーマンで給与収入が409万円、お母さんの給与収入が155万円、本人は自宅外通学、弟(妹)が公立の高校生とすると、第1区で授業料3分の1減免の対象となる。両親の世帯収入を合わせると564万円でも対象になるということだ。この世帯の場合、世帯収入が491万円で授業料が3分の2減免、世帯収入410万円で全額免除となる。

授業料減免の基準はイメージよりも低いと感じるのではないだろうか。世帯収入が410万円から564万円というと、平均的な収入に近いが、それでも全額または3分の2、3分の1免除の対象になり得るのだ。

さらに、これら授業料減免対象の家庭は給付型奨学金を受けられる世帯でもある。第1区分の自宅外通学で月6万6700円、第3区分の自宅外通学で2万2300円、第3区分の自宅通学でも9800円が支給される。これらは給付型のため、貸与型奨学金と異なり返さなくてもよい奨学金だ。

この制度を多くの学生や家庭が知らない

本山 勝寛『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。:貧困の連鎖を断ち切る「教育とお金」の話』(ポプラ新書)
本山 勝寛『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。:貧困の連鎖を断ち切る「教育とお金」の話』(ポプラ新書)

東大生の中には家計収入が450万円未満の家庭が13.6%いるが、その大半の学生が実際に授業料減免を受けている。ほかの国公立大学でも同様だったが、私立大学や専門学校にも対象が大幅に拡がった。

こういった事実はほとんど報道されないため、多くの学生や家庭が知らない状況だ。また、授業料免除制度があることはなんとなく知っていても、計算式や収入基準額などを知らないため、自分がその基準に当てはまらないと思い、申請をしていない学生も一定数いると思われる。

私は、この大学授業料免除のおかげで、親の収入がない状況でも大学を卒業することができた。「自分の家は貧しいから大学進学なんてできない」と、経済的理由で初めから大学進学をあきらめてしまっている高校生には、ぜひこの制度を知ってもらいたい。また、周りの先生や大人からもしっかりと伝えていただきたい。

【関連記事】
「知らなきゃ丸損」新型コロナで申請しないともらえない教育のお金
「8年で貯金110万円→1230万円」貯められない4人家族を一変させた方法
日本初のロシア人弁護士「日本育ちの私がネイティブ級の英語力を手に入れた勉強法」
「家庭学習で子供を賢くする方法」NY州弁護士&脳科学者の出した結論
投資家・村上世彰氏がN高生を「学習効果がない」とバッサリ切ったワケ