二階氏周辺から「内閣改造と党役員人事は9月8日以降に」の声
二階氏は田中氏を師と仰ぎ、若手議員のころは田中派に籍を置いていた。54歳で首相に就任する前に幹事長としての在任日数を重ねた田中氏と、齢81歳、政治家としては晩年に入って追いつきつつある二階氏を同列に扱うわけにはいかないが、二階氏にとって田中氏と肩をならべ、追い越すことは望外の喜びだ。
「中川超え」がかかる森山氏も同じ。二階氏と森山氏は連日のように国会などで情報交換している。話題は当然人事の話になるが、二階氏は決まって「まだどうなるか定まっていないようだ」と伝えているという。
二階氏に近い幹部は、「9月8日以降の人事にすべきだ」と安倍氏を牽制。一方、安倍氏周辺からも、日程については二階氏側に配慮していいのではないか、というささやきが漏れる。
安倍氏と二階氏は、政治信条もこれまで歩いてきた道も違う。ただ安倍氏は自分にない調整能力を持つ二階氏に一目を置く。二階氏が安倍3選を可能にする党則改正を提唱しなければ、今、安倍氏は首相官邸にいなかったことだろう。8月4日には野党である立憲民主党の辻元清美幹事長代行を自民党本部に招き、観光政策について意見交換した。そういう融通無碍な政治手法は、安倍政権の幅を広げている。
「角栄超え」を達成したら二階氏は幹事長を辞めるのか
安倍氏は8月6日、訪問先の広島市で内閣改造・党役員人事の日程を尋ねられ「人事については、現在、政府を挙げて、コロナウイルス対策に全力を挙げて取り組んでおります。人事の話はまだ先だというふうに考えている」と語った。婉曲的な表現だが「9月8日以降」の日程とする考えをにじませたものだ。
コロナ対応を優先するのは悪いことではない。しかし、二階氏の「角栄超え」をアシストするために政治日程を組み立てるとしたら、動機は不純だと言わざるを得ない。
そもそも9月8日以降に人事を先送れば、二階氏が喜ぶのか、という根源的な疑問が残る。二階氏は「角栄超え」を目指しているが、それを達成したら幹事長を辞めてもいいと思っているわけではない。できれば、次の人事で続投を果たしたい。
そんな中で人事が8日以降に行われることになったらどうなるか。「角栄超えは達成させるから、幹事長職は後進に道を譲ってほしい」というメッセージとも受け取れる。