まずはコミュニティの「ビジョン」を決める

熱心な10人との会話を通じて、まずはコミュニティの方向性、つまりはビジョンを決めていきます。

ビジョンという言葉に少し面食らうかもしれませんが、そこまで大仰なものでなくて構いません。自分たちの会社が実現したいことと参加者のメリットが合致する部分を言語化すればいいのです。

コミュニティづくりは、「そもそも何のためにやるのか」という方向性を決めることから始まります。誰を相手に、何を達成しようとしているのかという目的を明確にしましょう。

参考までに、ビジョンづくりのきっかけになりそうな、参加者への問いを列挙します。コミュニティを立ち上げるときには、次のような問いを集まってくれた10人の参加者に投げてヒントを見つけましょう。

【10人の熱心なファンにこう聞いてみよう】
・なぜ自社(あなたの会社)の製品やサービスを使っているのか
・その製品やサービスにどんなメリットを感じているのか、何を評価しているのか
・その製品やサービスを通して生活がどう変わったのか
・どんな人たちにその製品やサービスを薦めたいか

コミュニティづくりにおいて、最初につくるビジョンは大切な意味を持ちます。あらゆる意思決定の判断基準になるものだと理解してください。

ビジョンなしにコミュニティをスタートさせると、事業に関係が薄くても目立った施策に終始したり、目先の利益にとらわれた活動に陥りがちです。これは、コミュニティ運営においては、「手段が目的化している状態」で、とても危険です。そうならないためにも、コミュニティのビジョンづくりにはじっくりと時間を掛けましょう。

「購入者ヒアリング」×「社内議論」でビジョンを見いだす

先ほどの医療器具メーカーのヤマダさんは、コミュニティの目的を明確にするため、通販サイトで自社の体重計を購入した10人を呼んで、ヒアリングを実施することにしました。

話を聞くと、「医療器具メーカーならではの安心感がある」など、企業に対する信頼感が高いことが分かりました。また「ダイエットアプリのように人と励まし合える機能がほしい」「定期的に体重を測る仕掛けがほしい」といった意見も出てきました。

こうしたヒアリングから「信頼」「楽しさ」といったキーワードが浮かび上がりました。

さらに社内で議論を重ね、「自社の信頼感を武器に、楽しく健康な体づくりのできるコミュニティをつくろう」というビジョンが見えてきました。これを言葉にして、再び調査を実施し、コミュニティのビジョンは次のようになりました。

「健康づくりを100倍楽しくする」

健康管理はまじめに実践すると味気なく、長続きはしません。

しかしこのコミュニティに参加すれば、楽しく健康的な生活が送れます。参加者にコミュニティに加わるメリットが伝わり、共感を得ることのできるビジョンです。