SNSで相方を募り、相席系居酒屋で食べ放題

午前中は連れ出しの声がかからずランチを逃してしまったものの、午後2時、営業を抜け出して遊びにきたというスーツ姿の40代の男性に誘われ、店外へ。近くのカラオケボックスへ向かうという。連れ出し料5000円を支払って出てきた男性とビルの入り口で集合した愛華さんは、その場で千円札の束を受け取った。

「カラオケなら3000円でもいいんだけど、イケメンじゃないから4000円で交渉した」

そう耳打ちしてから現金をポケットに突っ込むと、愛華さんはかかとを弾ませて男の後をついていった。午後4時半、「あいつ、マジで歌ヘタすぎ! しかも携帯電話の充電切れそうだし。イライラしたわ~」とぼやきながら、また出会い喫茶へ戻ってきた。わずか2時間で店に戻ってきた愛華さんを、スタッフが笑いながら出迎える。

出会い喫茶に出入りする女性の中には、3万~5万円程度で売春行為をする者もいると聞くが、そういった行為は愛華さんのポリシーには反すると話す。

「ウリで稼いでもいいんだけど、面倒くさい。あたし、仕事はしたくないんだ。ここは涼しいし座れるし、ネイルもメイクもタダ。暇なときはスタッフとしゃべっていられるからさ」

いそいそと定位置に戻ると、さっそくスマートフォンを充電。隣の女性と二言、三言を交わすと、ネイル道具を手に取り塗り始めた。午前中に比べると女性の数は増えているが、愛華さんは常連として顔を知られているからだろうか、定位置の椅子は空いたままになっていた。

仕事帰りのサラリーマンが街に溢れる午後7時。愛華さんはひとりで店外へ出た。SNSで知り合った女性とともに、“相席系居酒屋”に向かうという。男性は有料、女性は無料で、出会いを求める男女で流行中の業態の店だ。

「女はひとりじゃ入店できないルールの店だから、相方をSNSで募集するの。だけど、私は食べてばっかりで人の話を聞かないから、男からクレームが出て、常連だった店を出禁になっちゃった(笑)」

女性は午後6時から始発まで時間制限なし滞在できる

彼女と同じように、SNSで同伴者を募る女性はほかにもいるそうで、「行きたいと呟けば誰かが応じてくれる」のだという。午後7時10分。待ち合わせ場所に現れたのは、ガールズバーで働くという20歳の女性。2人は初対面だというのに、旧知の間柄のように「何食べる~?」と盛り上がる。

女性は午後6時から始発まで時間制限なし滞在できるため、愛華さんはこの店で夜を明かすこともあるという。店内は、出会いに飢えた男性が多数待ち受けている。愛華さんらが席に座ると、さっそく店員の指示で学生らしき男性2人組が座った。彼女は男を適当にあしらいながら、ひたすら食事を胃袋に詰め込んでゆく。

「お腹いっぱぁ~い!」

学生とは別のスーツ姿の男性2人を従え、店を出てきたのは午後10時を過ぎた頃。しばらく路上で立ち話をすると、愛華さんは男性のひとりとLINEを交換し、ハグしてから別れた。

「男って、いつか使えるかもしれないじゃん。いけそうなやつは、連絡先をゲットしておいたほうがいいっしょ」

頰が先ほどよりもピンクに染まった。気になる男性の連絡先を手に入れたところを目撃され照れる横顔には、まだ少女の面影が見えた。そして彼女はひとりで、出会い喫茶へ戻っていった。