「日本経済低迷の原因は『お金の循環の停滞』にあるんです」
繰り返しになりますが、日本経済を停滞させてきた大きな原因というのは、お金の流れが病的なまでに滞っているという問題です。お金というのは社会の血液であり、お金の流れが活発になることによって、人やモノも活発になり経済が活性化します。
しかし、このお金の流れが滞っているために経済の動きが停滞し続けているというのがこれまでの日本経済の状況です。
日本には優秀な技術も人材も豊富にありますし、お金そのものも豊富にあります。それなのに、そのお金の動きが滞っているためにせっかくの技術やノウハウや人材が生かされていない状況が続いています。これはなんとも残念なことです。
日本でお金の流れが滞っている原因となっているのは、
①大企業の内部留保
②個人の預貯金(タンス預金含む)
の2つです。
日本の上場企業には今、400兆円を超える内部留保があります。
また、日本の個人の金融資産は1800兆円を超えていますが、その半分以上が現金・預金で、株式や投資信託に回っている割合は15%程度しかありません。この割合が米国並みに50%近くになれば、650兆円近くのお金が動き出すことになります。
では、これらのお金はどのようにしたら動かすことができるのでしょうか。
「資本主義経済の肝は何か。それはコーポレート・ガバナンスです」
「企業がお金を大量に滞留させている」という問題については、解決方法がはっきりしています。それは、コーポレート・ガバナンスを浸透させることです。コーポレート・ガバナンスというのは高校生の皆さんには聞きなれない言葉だと思いますので、ここで少し丁寧に説明しておきたいと思います。
コーポレート・ガバナンスというのは日本語では企業統治といいます。コーポレート(corporate)は「企業の」という意味で、ガバナンス(governance)は「統治」とか「管理」という意味です。
株式会社におけるコーポレート・ガバナンスとは、
・企業において健全な経営が行われているか(法令順守など)
・企業価値の最大化を目指す経営がなされているか
など株主が企業を監視・監督するための制度のことです。
そもそも株式会社においては、株を所有している株主がオーナーであり、経営者は株主から経営を負託された人です。そして、経営者は株主の負託を受けて経営のプロとして会社のかじ取りをして、株主はオーナーの立場でそれを監視するというのが本来の役割です。
これはプロ野球やJリーグのチームを思い浮かべてもらうと理解しやすいかと思います。プロ野球やJリーグの球団・クラブにはまずそのチームを所有するオーナーがいます。オーナーは監督を雇ってそのチームの運営を任せます。しかし、チーム運営が上手くいかずに成績が低迷すると、オーナーは監督のやり方を問いただしたり、注文を入れたり、場合によってはクビにしたりします。
企業における株主と経営者の関係も本来的にはこれと同じです。それは法律でも定められていることです。株主は経営を経営者に任せますが、その経営の在り方を監視し、経営者の能力や経営のやり方に問題があると判断した場合には、株主は株主総会における多数決の決議をもって経営陣を解任することができます。そして、新しい経営陣を選び直すことができます。