災害の時にこそ「こころの相続」の価値がわかる

水害の危険性があるにもかかわらず、人は川の近くに住みたがります。それは仕方がないことなのでしょう。人の生活に、水を欠かすことはできません。人びとは、農業だけではなく、炊事や洗濯に水を使い、野菜を洗うにも川の水を利用してきました。ですから、どうしても川の近くに家を建てたくなります。

五木寛之『こころの相続』(SB新書)
五木寛之『こころの相続』(SB新書)

しかし、「谷筋に家を建てるな」という先祖の忠告は、「こころの相続」として受け止めるべきだったのでしょう。

東日本大震災のときにしても、津波がきたらどうするのか、「津波てんでんこ」などという言い伝えも話題になりました。つまり、他を顧みずとにかく自分が助かることを考えろ、という教訓です。こうした教訓がしっかり相続されていたら、被害は減らせたのかもしれません。

家にいるはずの肉親を案じて、戻ったばかりに命を落とした、という話も聞きました。

「家族は普段からの申し合わせ通り、きっと逃げている」

心を鬼にして、そう信じるしかない局面もあったにちがいないのです。

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