未曾有の破綻ラッシュが起きている
日本では、新型コロナウイルス感染拡大による長期休業や客数減で売り上げが激減したアパレル企業が入居する商業施設の家賃減免を求め、家主である大手デベロッパーの多くが減免に応じたが、それでデベの経営が危なくなったという話はとんと聞かない。ところが、米国ではコロナ危機で家賃が入らなくなって破綻が危惧される商業施設デベが少なくないという。日米で、いったい何が違うのだろうか。
まず、米国アパレル業界の深刻な状況から説明したい。3月半ばからロックアウトで商業施設が全面封鎖され、5月末になってようやく大部分の商業施設が再開したが、この間の休業による売り上げ激減で百貨店のニーマンマーカスやJCペニーをはじめ、J.クルーやアセナ・リテール・グループなど多数のアパレルが破綻した。メイシーズは2~4月期で35億8100万ドルの損失を計上して4000人規模のリストラに追い込まれ、ギャップは家賃の未払いで大手デベに告訴されている。
営業を再開してもコロナ感染の第2波が荒れ狂う状況では客足は戻らず、米調査会社のコアサイトは持ちこたえられず閉店する店舗は年内に過去最高の1万5000店に達すると、1月末時点で8000店とした予測を大幅に修正した。
19年の米国小売業売り上げのうち自動車関連・燃料・建築資材・園芸用品を除く「コア売上」は前年から4.2%伸びて3兆2873億ドルに達したが、そのうちショッピングセンターの売り上げは2兆9211億ドルと小売業コア売上の9割近くを占めるから(日本は22.0%)、1万5000店の大半はショッピングセンターから消えることになる。
モール型からオープン型へ人気が移る
米国のショッピングセンター(SC)は、「クローズド」と「オープンエア」の2つのタイプで明暗がくっきり分かれつつある。前者は「モール」と呼ばれる空調された屋内型で大規模な広域施設が多く、コロナ前(19年第4四半期)でも入居率が前年同期から1.9ポイント落ちて89.1%と翳っていた。
一方、ディスカウントストアや食品スーパーなどを核店舗とするオープンエアSCの方は同0.2ポイント上がって93.3%だった。パンデミック以降はクローズドSCが疎まれオープンエアSCの人気が高まっているから、入居率の格差も一段と開いていくと思われる。それは3密を恐れる顧客だけでなく、クローズドSCの家賃の高さを嫌った店舗(テナント)にも共通する動きだから、閉店はクローズドSCのテナントに集中することになる。