「部則」は毎年生徒たちが作り直している

教師依存型になりかけたダンス部が、ここまで成長できたのはなぜか?

いろいろな理由はありますが、一番の理由は「部則」を守り続けてきたことにあると、私は分析しています。全国大会に出場するためにつくった「部則」は、その後もずっと受け継がれ、ダンス部に根付いています。この「部則」は「校則」をベースにつくられていますが、作成するのは部員たち。毎年、3月に部則のたたき台をつくるメンバーを全学年から選びます。

2020年度のダンス部部則(画像提供=宝仙学園中学校・高等学校)
2020年度のダンス部部則(画像提供=宝仙学園中学校・高等学校)

メンバーは、昨年の部則を見直し、反省点や分かりにくかった点などを改訂したり新たにルールを追加、撤廃したりします。その後、今年の新しい「部則」を全部員と私の前でプレゼン。部員や私から意見をもらい再度練り直します。それを自分たちでプリントにし、4月から入部してくる新入生への説明会で発表します。

自分たちで考え、自分たちで発表するこのスタイルは、部活内のルールを「決定」する権利は先生ではなく部員にあるという明確なメッセージにもなります。部員たちはなぜこのルールを守らないといけないのかを新入部員に説明しないといけないため、自分たちの「目的」をしっかり意識することができます。

 

「スマホ禁止」に表れるプライド

この「部則」の中には、「校内ではスマホの電源を切る」というルールがあり、かなり厳格に徹底されています。現在では校則が一部改訂され、「学業および生徒会関連の活動では時間帯によって使用可能」となっていますが、その改訂がされた後でも「部則」では「校内ではスマホの電源を切り使用する場合は先生に許可を取る」という姿勢を崩しませんでした。

なぜ「スマホ」の管理にそこまでこだわるのかというと、「スマホは個人の所有物であり、それをどう扱うかに個人の規律意識が現れるからだ」と思っています。電源をオフにしたかどうかは、本人以外確認しようがないからです。

人が見ているからルールを守るのではなく、「自分がどういう人間でいたいか」という個々人の道徳観念が大事ということです。それは彼女たちにとっての「プライド」だと感じています。その「プライド」を全部員がしっかり持っているかどうか、それがスマホ利用に一番よく現れるのです。