「部則」が部員たちの意識を向上させた

部活は基本休まない、休む場合は事前に必ず顧問に相談し、当日の欠席は体調不良以外は原則認めないなどの規則をつくり、厳しい練習を課すことにしました。

しかし、簡単に事は運びません。部員から猛反発がありました。「全国大会を目指すような部活に入った覚えはない」という意見もありました。自分たちが全国大会という夢のステージになど到底たどり着けるわけがない。たどり着けないのになぜ「努力」しなければいけないのかという訴えです。

そういう部員の意識を変えるためには「結果」が必要です。厳しい「部則」を課した代わりに「全国大会出場」という結果を出すことを部員に約束します。

何が何でも全国大会にという必死の思いと、全国大会を目指していた部員の頑張りにより、4年目の6月に全国大会に初出場し、そこで審査員特別賞を受賞する快挙を成し遂げることができました。「部則」というルールは部内に意識の向上と規律をもたらし、「全国大会で入賞」という結果も出したことで部活の雰囲気は一変します。

堅実で真面目だけど、「決められない」今の高校生

問題はここからでした。ようやく荒野にひとつの花が咲き、まわりの環境や部員の意識は当然高まり、荒野は草原へと姿を変えていきます。かつて荒野で育った部員は卒業し、それと入れ替えに草原で咲く花を見て入部してくる部員が増えていきます。

すると、新しく入ってきた部員は大きな勘違いをします。それは「先生の言うことを聞いていれば大丈夫」「先生に任せておこう」「先生の指示を待とう」という教師依存マインドをもってしまうことです。

このダンス部は、教員の私が一人だけでつくってきた部ではありません。それまでの部員たちの努力と必死さがあったから、荒野を草原にまで変えたのです。

けれども現実にはいくら説明をしても伝わらず、教師依存の思考停止型ダンス部になってしまいそうな時期でもありました。

今の高校生を見ていると、みんな非常に堅実で真面目な印象を受けます。その反面、リスクを背負ったり、誰かと衝突したり、自分で「決定」することを避ける傾向があります。

自分で「決定」をすれば「責任」が伴います。「決定」をする前には自分で考えなければいけません。まさにそのみんなが大嫌いかもしれないプロセスを経験させることが私の目的であり「大切なこと」だと考えています。

世界大会の出場も大きなリスクを背負いました。高校ダンス部がチャレンジしたことのない未知の領域、全国大会の5年連続出場もかかっていました。でも、国内大会ではなく世界大会に出場することを自分たちで決め、見事に実行できました。