小泉進次郎大臣が率いる環境省

その計画を準備している役所は「小泉進次郎大臣が率いる環境省」である。2020年7月に行われた環境省の新事務次官人事は非常に示唆深いものだった。

環境省は非常に地味な役所であり、現在の1府12省庁の中では相対的に弱小省庁だと言える。省昇格したての頃の環境省は大蔵省や厚生省などからの次官を受け入れざるを得なかったが、昨今ではプロパー出身の事務次官が増加していた。ところが、今回の新事務次官人事では財務省出身の中井徳太郎環境事務次官が久しぶりに誕生することになったのだ。

その中井新環境事務次官が就任時記者会見に気候変動対策として有効性を強調した「新税」が「炭素税」である。

簡単に言うと、炭素税(≒カーボンプライシング)は化石燃料などを使用することに伴う二酸化炭素の排出量に応じて課税する政策のことだ。日本では既に一部が地球温暖化対策税として既存の税に上乗せする形で類似の負担が行われているが、この措置を大幅に拡大しようというのが炭素税導入の趣旨である。

進次郎の増税の実態

4月10日の記者会見で、小泉環境大臣は、

「目の前の今、炭素税ということの前に、今後の社会の在り方をどういうふうに社会的な国民的な合意をつくっていけるかというのは、今、目の前はまず生活です。でも、その後には間違いなくこういったことを、政治だけではなくて、国民の皆さんの声も聞きながら一緒になって考えていかなければいけないと。炭素税に対する結論は、私はそういった先に来るのではないかなというふうに思います」

と述べており、2021年税制改革要望に盛り込むことを形式上はいったん見送っている。新型コロナウイルス下において当然の判断であるが、それと同時に、

「炭素税イコール税という名前が付いていますから、こんなときに増税かと。こういうことでカーボンプライシング、炭素税と言われるものが目指している脱炭素型に社会全体を変えていく歯車でもある、そういうことが、理解が届かなくなってしまっては元も子もありません」

とも述べており、国民の理解を促したうえで、炭素税を導入すること自体には前向きな姿勢を目指している。記者会見3カ月後の中井事務次官の発言は、政治家ではない役人が新税の創設の必要性について言及する越権的な行為であるが、実際には小泉大臣の本音を代弁したものだと言えよう。

実際、安倍政権は2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定し、カーボンプライシングに関して「国際的な動向や我が国の事情、産業の国際競争力への影響等を踏まえた専門的・技術的な議論が必要である」と明記しており、環境省の2020年税制改正要望にも同様の内容を盛り込んでいた。今年は時期尚早ということで炭素税導入を急がなかったにすぎないと見るべきだろう。