中国のオーストラリアへの浸透工作は2004年から

オーストラリアと懇ろに付き合ってきた中国は、2004年8月から同国への工作を本格化。米豪同盟を破壊し、米国にノーといえる国にするのが中国の対豪工作の主眼だったという。中国系企業や移民が与野党に多額の政治献金を行ってきたほか、財界・学会・教育界・メディア業界など工作対象は多岐にわたり、中国が同国の各分野をいかに操作してきたか、その実態が明らかになった〔クライブ・ハミルトン『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』(飛鳥新社)〕。

危機を覚えた同国は、ここ数年で工作の対象となった要人の永住権を剝奪したり法改正を行うなどして、対外工作から身を守るための防壁を築いている。

スパイ防止法がきちんと整備されていたオーストラリアでもそんなありさまだ。外国勢力の工作を防ぐ法律もないうえに、中国との歴史的な関わりがオーストラリアより格段に深い日本であれば、同様かそれ以上の事態が進行していることは想像に難くない。かつて尖閣諸島に強引に上陸し、逮捕された元国会議員は、「最大の障害は日本政府だった」と振り返っているが、霞が関・永田町や大企業・マスメディアに深く浸透している「親中派」の存在と、尖閣における政府の不可解な不作為とを結びつけるのは難しくない。

中国、というより中国共産党という組織の傲岸さが世界中に周知され、それが引き起こした米中対立が新たな局面に突入した今、日本人の体に染みついた中国への忖度がまったく不要であることを、この際はっきり認識すべきだ。嫌なことをされたら「ノー」と言う、怒りを見せるときは見せる。そこに躊躇している時代ではもはやない。

米中いずれにつくのか、その選択を迫られる日が来る可能性は高い。その日のためにも、日本にはオーストラリアと同じかそれ以上の、大がかりな荒療治をやっておくことが必要なのではないか。

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