なぜ朴ソウル市長は自殺してしまったのか

真相究明はさておき、パク市長は皮肉にも国内の女性問題改善に最も寄与した先駆者の一人だった。弁護士であった1993年、韓国初のセクハラ訴訟の弁護を行い、6年の法廷闘争の末に勝訴。従軍慰安婦問題にも精力的に取り組み、人権活動家として数々の業績も打ち立てた。

人には理想自己、義務自己、現実自己といった自己像がある。他者に見せている自分や思い描いている自分と、実際の自分が一致しないと自尊心が著しく低下することが各種研究でも明らかになっている(ただ、自尊心の定義は文化や国ごとに少しずつ異なる)。

パク市長の場合は女性問題の先駆者および名のある人権活動家としての自己像と現実自己の間に大きな乖離かいりがあったのかもしれない。そして弁護士として正義を追求してきただけに、告発を受けたことで自己像が矛盾することを許せなかったという可能性もある。

加えて、韓国国内の文化心理学研究には韓国人の自己評価は客観的現実ではなく自身の理想のイメージに基づいたものであるという結果もある。他の国内研究ではさらに、韓国人にとっての自尊心とは、平素は自覚されていないが、他者との関係性の中で傷つけられたときにネガティブな情緒とともに発現する概念であるとも分析している。

そして、多くの人がそうした感情を発散できず、誰かに話したりSNSに書いたりすることで「再体験」「反芻」しメンタルの健康度がどんどん下がっていく。こうしたことも、韓国人の自殺の多さの要因につながる一因なのかもしれない。

日本も対岸の火事では済まないかもしれない

日本でも主にアラフォー以上の著名男性が公共の場で性差別発言をしたり、職位を乱用したセクハラや不貞行為を行ったりする事例が相次いでいる。自身が若い頃から当然のように感受していた「常識」が突如、社会的に断罪されSNSからも罵声を浴びるといった急激なパラダイムシフトに戸惑うことは十分に想像できるが、彼らがそう簡単に自殺していないのは、日本が良くも悪くも「ほとぼり」が覚めれば「再起」できる社会であるからと考えられる。一方、同調圧力の強い韓国では非常に厳しく、叩く側の記憶力も良いため自殺念慮が加速する要因にもなる。

だが中年男性においては直ちに女性観と言動をアップデートしないとパク市長のように自ら命を脅かすことになりかねない。社会的実績とセクハラが両価的に成立する時代はすでに終わっているのだから。

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