韓国は中国から追い上げられる
文政権が米国との安全保障の重要性をしっかりと認識できていなかった代償はあまりに大きい。先行きの展開は不透明だが、2022年5月までは文政権が続く。当面、韓国経済の停滞懸念は高まり、社会に閉塞感が広がる展開は軽視できない。
重要なことは、韓国が米中対立の先鋭化にうまく対応できず、経済の縮小均衡懸念が高まっていることだ。
米国の需要取り込みに注力し始めた台湾政府とTSMCと異なり、外需依存度の高い韓国はどのように中国以外の需要を取り込むか、明確な方針を打ち出せていない。その間も、米国が中国にヒューストン領事館の閉鎖を命じるなど米中対立は激化し、韓国はより厳しい状況に直面しつつある。
やや長めの目線で考えると韓国は中国から追い上げられるだろう。中国は米国の制裁を跳ね返そうと半導体の自給率向上に必死だ。中国政府は“中国製造2025”のもとで企業の資金調達を支援し、海外の技術者を高給で雇い入れることなどによって、最先端の半導体生産能力を確立しようとしている。
一説では韓国や台湾に比べ中国の半導体生産能力は3年程度遅れているようだが、それよりも短い期間で中国が最先端の半導体生産体制を確立する可能性は軽視できない。
韓国の社会心理は一段と悪化する
半導体以外の産業でも韓国は中国に追い上げられている。韓国企業が競争力を発揮してきたディスプレイ分野でも中国の競争力向上が著しい。本年秋の発売が噂される5G対応の新型iPhoneの一部モデルには、サムスン電子の有機ELディスプレイに代わって中国の京東方科技集団(BOE)の製品が搭載される可能性がある。
今のところ、台湾は米中の対立にうまく対応できているように見える。一方で、韓国が米中の対立をチャンスに変えることは難しく、より大きなダメージを被る展開は排除できない。
韓国は新型コロナウイルスの感染拡大にも対応しなければならない。効果のあるワクチン開発と供給には不確実な部分がある。不確定要素が増大する環境に文政権が対応することは容易ではないだろう。
当面、韓国国内では政権への不満や批判が増え、社会心理が一段と悪化する可能性がある。