既存の生態系ネットワークを破壊する外来アリ

ヒアリは雑食性であるため、営巣は人の健康だけでなく、生態系や農業にも被害を及ぼす。アメリカでは畑のトウモロコシや小麦や大豆の種を畑から持ち去り、果樹の根っこを害し、家畜にも被害を及ぼす。さらには通信や送電、信号機などのインフラ機器内に侵入し、電気回線をショートさせる原因にもなるという(*2)

テキサスで実施された調査では、ヒアリ侵入後の短い期間内にも、その地のアリ類相に大きな影響を与えると示されている(*5)

在来のアリたちの中には、花の種子散布を手伝うものもいる。また、植物が虫たちに食べられるのを防ぐガードマンとして働くアリもいる。植物をむさぼり食う害虫に対抗するためにアリを雇って自らを防衛する植物も多い。作物を加害するアブラムシの増殖を助けるアリや、花粉を媒介する昆虫を食べるアリもいる。

ところが、ヒアリを含め外来侵略アリ類の多くは、固有のアリ類を駆逐することもあり、植生への影響も見逃せない(*2)

外来アリは、このように生態系に既存のネットワークをも破壊してしまうのだ。人の健康への被害のほか、農業を含む産業活動の被害など、外来アリが私たちの暮らしに及ぼす包括的なコストは計り知れない。

グローバリズムの代償

ヒアリの侵入は、生産物を主に輸入に頼るようになった日本の現状が招いた「人災」ということもできる。豊かな消費文化を手にした代償として、私たちはいずれ、家族連れで公園に遊びに行くなどといった日常を失うことになるかもしれない。

日本に侵入するヒアリとは逆に、日本に固有のオオハリアリは米国やオーストラリアに侵入して、海外の固有種に影響し、人への健康被害も及ぼして、現地では対応に苦慮している(*2)。外来種の問題は、もはや国際的な人類共通の敵となっているわけだ。

グローバリズムとインバウンド経済を優先させると、かつての日常が奪われるという点では、新型コロナウイルスもヒアリをはじめとした外来害虫たちもその構図は同じである。

本来そこにいるはずではなかった生命が、グローバリズムの結果、世界を移動できるようになり蔓延する。結果として、彼らは意図せず、私たちに襲い掛かり、パニックが生じる。

残念ながら、これらの問題を完全に解決する方法はない。国境を閉じるか、さもなければ、「正しく恐れて自衛する」ほか道はない。現在は後者の選択をしているわけだが、いずれ人類が前者の選択をするときがくるかもしれない。

安全のため便利さを手放す。そのときこそ、本当の「パニック」が訪れるだろう。

■参考文献
*1 環境省 2020年度のヒアリ確認事例
*2 橋本佳明(編著)2020.『外来アリのはなし』朝倉書店
*3 Ascunce MS et al. 2011. Science 331, 1066-1068
*4 Morrison LW et al. 2004. Biological Invasions 6, 183-191
*5 Morrison LW 2002. Ecology 83, 2337-2345

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