人を不安にさせる映像と言葉が巧みに使われた

時間を追うと、まずメディアは家で情報番組やニュースを見ることが多い高齢の方、特に持病がある人は重症になりやすいと繰り返し報道しました。感染すると呼吸器が必要になったり、人工肺であるECMO(Extracorporeal membrane oxygenation:体外式膜型人工肺)を装着しなくてはならないとも伝えられました。通常の感冒には使わない大掛かりな装置を目にすれば、誰でも怖くなります。

メディアの恐怖を起こさせることと不安の継続については、非常に洗練されています。ダイアモンドプリンセス、オーバーシュート、クラスター、医療崩壊、嗅覚味覚障害などなど恐怖を感じさせるキーワードがたくさん出てきていました。

他のウイルスでも見られる「嗅覚味覚障害」という一般の方には見慣れないキーワードを提示したところには感服します。実は、コロナではずっと頻度が多い「胃腸炎」は、軽症で新規性がないため、不安を起こさせるキーワードには選ばれなかったのだと推測しています。

それをみて、私は「次のキーワードをあててみよう」とか、「あなたが為政者なら次は何をおこないますか?」、「治療薬で先頭を走る日本、ドラッグリポジショニング」といった内容をブログに綴り続けました。

日本の陽性者のうち、9割は回復している

でも、実際はどうだったのでしょう? 日本では発症者のうち何割が軽症で、何割が重症になり総数何名が呼吸器などを装着しなくてはいけなかったのか、そういった全体像を私達は知らされていません。

海外のデータを調べると、日本の陽性者のうち9割が回復されています(※1)。日本では、発症者や濃厚接触者だけをPCRしていました。もし、もっと数多くPCRをおこなっていたら、軽症の方が増加し回復率は高齢者を含めて95%以上かもしれません。

米国NYの惨状の映像を繰り返し、いざというとき自分たちを守ってくれる医療も崩壊してしまうかもしれないとも報道されました。守ってくれる場所が無くなってしまって逃げ場所すらないのか……という恐怖につながりました。

米国の様子をみてみましょう。前回お示しした通り、日本のこれまでの「半年近くの総数以上」が「毎日」米国では発生しています。日本の100日以上の累計患者数ですら米国の1日の発症数を下回ります。(図表1)

2月から7月の、米国の1日の感染者数(赤)と死亡者数(青)(図版作成=大和田潔)
2月から7月の、米国の1日の感染者数(赤)と死亡者数(青)(図版作成=大和田潔)

米国では連日数万人が発症していますが、大統領選挙の日程も順調にこなし独立記念も祝う準備がなされています。医療崩壊の危機は脱しています。米国では毎日数万人が発症する一方で死亡者数は減少を続けています。コロナは致死的ウイルスではありません(※2)。また、現在使える治療薬も積極的に採用しようとしていて外来患者さんへのアビガンのトライアルがスタンフォード大学で開始されています(※3)