「手数料が割高だから」キャッシュレスをやめる店舗
ここを店舗側はどう見ているのか。先のwebアンケート調査では、6月末でキャッシュレスの支払い手段を91.6%が「継続する」と回答。しかし、残りの「継続しない」と答えた店舗のうち46%は、その理由として「当初予想よりも決済手数料などの費用が割高だったから」、39%は「キャッシュレスの支払い手段を利用する顧客が少ないから」と回答。手数料の負担の重さから、せっかく増やした加盟店が逃げてしまいかねない。
しかも現金払いと違って、売買から入金までにタイムラグがある。そのため、全国でも約2割の店舗が「入金サイクルの変化に起因して、資金繰りに困ることがある」と回答した。前述の「今後はサービスを止める」と回答した店舗の中でも、「入金までに一定日数以上かかるため、資金繰りに困ることがあったから」との回答が24%に上っている。
また一方のユーザー側から見える風景も、国やサービス供給側とは少々異なる。前述のアンケートでは、現在キャッシュレスを利用している消費者の83.8%が、「7月以降も利用を継続したい」と回答しているという。ただ、ユーザーからすれば、どのサービスが生き残ろうがどう住み分けようが、理想は単一のサービスがいつでもどこでも、時間と手間をかけずに使えることだ。
「Suica+iD」が最もシンプル&スマート?
しかし実際は、サービスは覚えきれぬほどあり、各々バラバラな登録店舗をいちいち確認しなければならず、どれを選べば自分にとって得なのかわかりづらい。しかも、実際に使うときには店頭でスマホのアプリを立ち上げてからQRコードを読み取らせるまでに、2つや3つの余計なアクションが必要だ。
このままなら現金のほうが楽だし、単に「現金からキャッシュレスへ」というなら、使う際に「ピッ!」の1アクションで済むSuicaやPASMOなどのフェリカ形式の電子マネー、その上限額を超える買い物は、キャッシュカードをスマホに仕込んだiDを使う……という組み合わせが、現時点では最もシンプルでスマートにも思える。実際、すでに10代、20代の半数以上が交通以外の買い物用としてすっかりなじんでおり、これがどこででも使えるようになれば他のサービスは出る幕がなさそうに思える。
9月からは、総務省がマイナンバーと紐づけたキャッシュレスサービスを使うとポイントが還元される「マイナポイント事業」を始める。サービス各社が引き続き競うなか、6月30日にSuicaを擁するJR東日本も決済事業者として名乗りを上げた。世間ではキャッシュレス推進の重要性よりも、ポイントによる“釣り”ばかりが話題となるが、サービス各社の体力勝負が、ユーザーにとっても店舗側にとってもベストなキャッシュレス決済の選択につながってほしいものだ。