前者は、白米や小麦粉のような精製された「白い炭水化物」、後者は、玄米や全粒粉、蕎麦粉のような精製されていない「茶色い炭水化物」です。それでは、同じ炭水化物の食品なのに、どうして精製されたか否かで、明暗が分かれてしまうのでしょうか?

「白い炭水化物」と「茶色い炭水化物」

例えば、同じ米でも、玄米と白米では成分が違います。玄米には、胚乳のほかに胚芽、ヌカもついていて、胚芽やヌカには、食物繊維や栄養素が多く含まれています。それに対して、精白によって、胚乳だけが残されたのが白米です。同じように、全粒粉には、小麦の胚乳だけでなく、表皮(フスマ)や胚芽が入っていて、表皮や胚芽に含まれる食物繊維や栄養素も豊富。一方で、精製によって小麦の表皮や胚芽を取り除き、胚乳だけを残したのが小麦粉なのです。つまり、茶色い炭水化物から精製によって失われた成分には、健康に役立つ優れた働きがあったと考えられるわけです。

ここで、茶色い炭水化物に、どのような健康効果があるのか、エビデンスに基づいて明らかにしましょう。

白米の摂取量が多いほど糖尿病リスクは高くなる

米国や英国、北欧などの研究(78万6000人が対象)を統合解析したメタアナリシスによれば、茶色い炭水化物を1日70グラム摂ったグループは、ほとんど摂らなかったグループよりも、死亡率が22%低下しました。7つの研究を統合解析した別のメタアナリシスでは、茶色い炭水化物の摂取量が多い(1日に2.5単位以上)グループは、摂取量が少ない(1週間に2単位未満)グループに比べて、心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化によって起こる病気になるリスクが、21%も低かったのです。

さらに、玄米を1週間に200グラム以上食べる人は、1カ月に100グラム未満しか食べない人に比べて、糖尿病のリスクが11%減少するという研究報告もあります。

白米の代わりに食べたいものとは

反対に、日本の国民食であり、白い炭水化物の代表ともいえる白米については、残念ながら、少量でも健康によくないというエビデンスが示されています。国立国際医療研究センターの研究者らが日本人を対象に行った研究では、男性では、白米を食べる量が1日お碗2杯以下(1杯を160グラムと換算)の人に比べて、1日お碗2~3杯の人は、5年以内に糖尿病になるリスクが、24%も高いことが明らかになりました。女性では、白米を1日お碗1杯しか食べない人に比べて、お碗2杯食べる人は15%、お碗3杯食べる人は48%、お碗4杯食べる人はなんと68%も、糖尿病になるリスクが上昇しました。