フラット35は最長15年延長で年額約29万円の負担を軽減

具体的にどのような方法があるか。まずは住宅金融支援機構のフラット35を例に見ていきましょう。

住宅金融支援機構では、新型コロナウイルス感染症の影響により返済が困難になった人に対し、編成方法の変更メニューを用意しています。「返済特例」「中ゆとり」「ボーナス返済の見直し」の3つで、複数を組み合わせることもできます。

最も返済負担の軽減効果が大きいのは「返済特例」で、利用できるのは、以下3つの項目すべてに当てはまる人です。

① 経済事情や病気等で返済が困難
② 以下の収入基準のいずれかを満たす
・年収が機構への年間総返済額の4倍以下
・月収が世帯人数×6万4000円以下
・住宅ローン(機構以外も含む)の年間総返済額の年収に対する割合が一定(年収700万円以上では45%など)を超え、前年の収入が前々年の収入より20%以上減少(直近の収入見込みなどでの審査も可能)
③ 返済方法の変更により、返済が継続できる

返済特例では、返済期間を最長15年(完済時の年齢は80歳まで)延長できます。例えばローンの借入額が3000万円、金利が2%、35年返済の場合、毎月返済額は約9万9200円です。これを5年延長すると、毎月返済額は約8万8800円、10年延長で約8万1100円、15年延長で約7万5300円。15年延長では、月額約2万4000円、年額約29万円の負担軽減になります。

このほか、「中ゆとり」は一定期間のみ返済額を軽減し、一定期間終了後は、減らした分を上乗せして返済していく方法です。

業績の悪化でボーナスが減るという人には、ボーナス返済を取りやめたり、ボーナス返済の割合を減らしたりする「ボーナス返済の見直し」も可能です。ボーナス返済を減らした分、毎月返済は多くなります。

急場をしのいだら返済ペースをアップする

返済方法を見直す際に注意したいのはデメリットがあるということです。返済期間を延長したり、一定期間、返済額を軽減したりすることで毎月の返済負担が軽くなる代わりに、返済が遅れる分、利息が発生し、返済総額は多くなります。前述した「返済特例」で返済期間を延長するケースでは、5年延長で約157万円、10年延長で約323万円、15年延長で約494万円の負担増です。

とはいえ、コロナ禍で減った収入に合わせて返済額を減らした後、そのまま返済額を抑え続ける必要はありません。延長した返済期間を元に戻すなど、再度、返済方法を見直すことも可能ですから、収入が回復したら、すぐに金融機関に相談しましょう。あくまでも「一時的に返済負担を減らし、返せるようになったら元の額に戻す」ということが重要です。

民間の住宅ローンも含めて、いくらなら返済できるか、返済が厳しいのはどれくらいの期間続くかをしっかり考え、金融機関に相談しましょう。まずは、大変な今を乗り越えることを優先させ、落ち着いたら、次は早期完済を目指すのが理想です。

ちなみに住宅ローンを借り入れる際には、債務者が死亡または高度障害に陥った場合などに以後の返済が免除される団体信用生命保険に加入するのが原則です。フラット35では、特約料(保険料)が年1回の支払いですが、コロナウイルス感染症の影響で収入が減少した場合など、最長で6カ月目の月末まで払込期限が猶予されます。支払いが困難な場合は相談してみましょう。

民間の住宅ローンの多くは、保険料は金利に含まれています。