一番の魅力が「価格」という店はつまずきやすい。価格の安さだけで選ばれているところは、そこよりさらに安い競合店が現れると、一気に顧客が流出してしまう恐れが強いからだ。今回の結果からいえば「しまむら」は「ユニクロ」に比べて価格は安いが、接客レベルは不十分という評価だった。どちらも低価格のカジュアルウエアを展開しているが、接客や品質を評価されているユニクロのほうが市場の変化に強いといえる。

「違い」をアピールするときには、徹底的にやらなければ意味がない。本質的な違いがなければ、一度使ってみたらそれでもう満足という「話題消費」に終わるケースがある。

たとえばビール業界ではここ数年、発泡酒の新商品が次々と発売されたが、いずれも「話題消費」で終わってしまっている。発泡酒というジャンルの中でいくら違いをアピールされても、本質的な違いがわずかしかなければ、リピーターは現れない。その一方で「ヱビスビールやプレミアムモルツを飲んだら、すごくおいしかった」という層が現れた。発泡酒との違いが明確な「プレミアムビール」という新たなマーケットが生まれたのだ。違いが明確になったとき、次なる市場が形成され、利用率も上がってくる。

今回高い評価を得た家具のIKEA(イケア)は「まず販売価格を想定し、そこから商品開発を始めている」とアピールしている。組み立てを原則とするイケアの商品は非常に安く、既存の家具業界との違いをはっきりと認識させてくれる。「雑貨文化」で育った人が行き着くところとしてインテリアの魅力を訴え、新たなマーケットを開拓しようとしている。

日本人は同質化の中で競おうとする。だから潰しあいとなっていく。そうではなく「一度行ったらすごく記憶に残る」とか「個性の違いが魅力的だ」といった際立ちにこそ訴求力があることに気がつけば、もっと違う競争ができるはずだ。合議制を重んじる日本の企業は、こうした取り組みが不得手だ。社員は失敗を恐れて、守りに入ってしまう。しかし、いままでの概念を崩したところでしか、新たな評価を呼ぶことはできない。

さらに今回の調査では、総合評価の高い業態とそうでない業態という「異業種間でのサービス格差」も見てとることができる。とくに都市銀行やファミリーレストランでその傾向が強かった。それぞれの業態でのトップを喜ぶのではなく、全業態の中でトップをとろうという発想が必要だ。業態を超えて信頼される企業こそ、ハイクオリティだと評価され、生活を豊かにしてくれると実感させれば、顧客から支持される。それこそが企業の真の強みになるはずだ。

ヤフーバリューインサイトに調査を依頼。20歳以上~70歳未満の会員のうち1000人から回答を得た。調査期間は2008年1月28~29日。編集部で選定した223の有名企業・ブランドについて満足度と重視点は3段階、再訪意向と紹介意向は2段階で尋ね、100点満点に換算した。総合点は重視点を反映させており5項目の和と一致しない。サンプル数5件以下の企業は掲載を見送った。
(中村尚樹=構成 ライヴ・アート=図版作成)