タバコを吸いながらリモート会議に参加する上司
10年ほど前に「友達のお母さんが握ったおにぎりが気持ち悪くて食べられない子供」というTwitterの投稿が賛否両論の話題になりましたが、今となっては「食べないのが無難」という世の中になってしまいました。
物事の工程に人間が介在することはこれまでは「手作り」「ハンドメイド」など、付加価値として語られてきましたが、もはやマイナスになってしまうのかもしれません。荷物の配達を玄関先に置き配してもらうように、人と人との間に時間や空間、物質を介在させることが、「物事をアンダーコントロールできている安心感」になっています。ともすると人間にとって最もコントロールできないのは「他の人間である」という感覚は、悲しいかな当たり前のものとして残るでしょう。
一方、今回のリモートワークの会議で「スモーカーの上司がタバコを吸いながらうれしそうに参加していた」というケースもありました。このように空間や物質を人と人の間に介在させることが、互いが生きやすくなる上で良い作用をもたらすこともあるわけです。
「人と人の間に何を介在させるか」「それによって、個々人が快適で安心な“アンダーコントロール感”をどう享受できるか」。このあたりが企業側にとっては価値づくりのポイントになっていきそうです。
Stay homeでネタ切れを起こしたインスタグラム
自己表現のパラダイムが自分の外側に存在する「客体を使ったアプローチ」から、自分自身の内側からの「主体的なアプローチ」に変わりつつあります。
インスタグラムを楽しんでいた大学生の多くが、「Stay homeでは画がネタ切れです」と悩んでいます。ある学生は「これまでいかに、どこに行き、何を観て、何を食べ、誰と写真を撮るかといった、自分の外側のもので自己表現していたかがわかった」と発言していました。
これらを踏まえると客体をビジュアルで表現する方法から、よりその人の意見や主義といった非物質的な「オピニオン」が重視されていくと見ています。Voicyやstand.fmなどの音声発信プラットフォームに注目が集まるのも、単に視覚から聴覚へのシフトである以上に、自己表現やそれに対する受容が「客体的なものから主体的なもの」へシフトしていることの表れではないでしょうか。
それに伴って「オピニオン格差」とも言える、考えや意見を形成する力の格差が新たな問題として浮上する可能性もあります。