「母の日は、生花店のいちばんのかき入れ時だ。長蛇の列をつくるお客と、次々搬入される大量のカーネーション。それを捌く店頭は、さながら戦場の様相を呈する。怒濤のようなその1日を、青山フラワーマーケットは、心地よい疲労感とともに乗り切った。

売り上げトップクラスの店舗では、この1日で販売額が600万円を突破。朝10時から夜8時まで店を開けたと仮定すれば、平均して1分間に1万円以上の花が売れていった計算になる。

もちろんすべての生花店が1日で100万単位の売り上げを上げられるわけではない。それどころか、花き業界全体は縮小の一途を辿っている。2009年発表の農林水産省資料によれば、1997年時点での国内花き需要は6800億円。それが07年には5400億円にまで低下した。10年間で需要2割ダウンの現実に、街の生花店が耐えられるはずもなく、これといった打開策も実行できないまま、閉店に追い込まれる店が後を絶たない。

青山フラワーマーケットの業績推移
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青山フラワーマーケットの業績推移

一方、青山フラワーマーケットの店舗数は、00年時点で14店。それが09年には67店舗と5倍近くに増加している。経営元のパーク・コーポレーションの売上高も比例して急伸し、09年12月期で約48億円と、実に8倍になった。縮小する花き業界でなぜ青山フラワーマーケットだけが好調なのか。

時代に逆らう急成長の陰には、さぞかし綿密な上意下達の拡大戦略があるかと思いきや、実態は「マニュアルなし」「ノルマなし」。チェーン店であるにもかかわらず、花の仕入れは各店の裁量に任され、本部には仕入れ担当もマーケティング部門も存在しない。店舗スタッフの採用すら各店で独自に行っているという。経済環境が厳しく、消費者が生活必需品へかける費用を減らす中、生活必需品ではない花を売って増収を続ける秘密を追った。

「一番気になるのは売り上げではありません。来店するお客様の数をいかに増やすかをいつも考えています」