「新しいアイデアがあるならやってみろ」が井上氏の口癖である。店舗設計の担当者は、新店舗を設計するのに「(店内に水が流れるしくみなどの)今までにない新しいデザインに開店費用の10%を費やせ」と言われ、母の日用ギフト商品の企画を10カ月前から準備していたスタッフは、販売1カ月前に「まだほかにやれることはないか」と尻を叩かれる。

そこでスタッフが奮起するのは、パーク・コーポレーション代表取締役 井上英明氏の言葉の最後に「失敗してもいいから」の一言があるからだ。

「お金を儲けることは、人生を生き抜くための手段であって、目的ではない。だから少しくらい失敗してもいいと思うんです。業態上、一度に10億、20億を失うなんてことはありえませんしね」と井上氏は言う。しかし、数千万円単位の決裁となる新規出店に際しても、担当スタッフが吟味した出店候補地に異議を唱えることはほとんどない。社長から本部社員、本部から各店舗、店長からスタッフ。どの段階でも「責任を持たせてやる気を引き出す」指導が徹底されている。

本社で研修を受けるためアルバイトでもセンスのいい花束を作ることができる

本社で研修を受けるためアルバイトでもセンスのいい花束を作ることができる

ほかの生花店から転職してきたスタッフも、「イキイキと前向きな気持ちで働く人が多いのに驚かされた」と言い、こうした権限委譲が働きがいにつながっているのがよくわかる。

「仕事は砥石、自分を磨くためのものです。ならばマニュアルで縛るより、一人一人が自由に動けるほうがいい。しかしスポーツにルールがあるように、仕事にもルールは必要でしょう。そこで、給与や昇進の制度を整えているのです。従業員には会社をスタジアムだと思って、ルールにのっとった試合に専念してほしい」(井上氏)

給与には歩合制が取り入れられ、昇進はアルバイトも含めた従業員全員が受験する試験の結果が反映される。これらは明確で公平なルールであるとともに、努力とチャレンジ精神なくしてそのメリットを享受することはないだろう。