風俗嬢が命綱にした「ベーシックインカム」とは

話が決まったら早い。翌日、14時に歌舞伎町のドン・キホーテ前で高井さんと会い、歌舞伎町で風俗嬢をしている佐藤さんの案内で3Pができるホテルへと入った。

「高井さんは、『コロナのせいでお店に行けないからこうやって会えるのが嬉しい』ってずっと言ってましたね。プレイは至って普通で、終わるのが早いので、2時間の間はほとんど添い寝してただけ。しゃべって、タバコ吸って、スマホ見てホストのツイート確認して、またプレイして……みたいな(笑)」

「早くいつもの歌舞伎町に戻ればいいんだけどね。じゃないと困るし」
筆者撮影
「早くいつもの歌舞伎町に戻ればいいんだけどね。じゃないと困るし」

こうして2時間後、しっかり2人は7万円を受け取り、歌舞伎町を後にした。このように、緊急事態宣言後は、“安全な常連さん”とだけつながっている風俗嬢がいたようで、彼女たちは裏引きした男性客からの報酬がコロナ禍における「ベーシックインカム」になっていたようだ。

「結局、常連さんと週1くらいで会ってて、金銭状態は最悪なことにはなってないけど、早く日常に戻ってほしいです」

だが、千佳さんのように“裏引き”できるのはごく一部の風俗嬢に限られるのが実情だ。事実、千佳さんは勤務する栄町の店舗でナンバー2の実績を持つ人気嬢。これが不人気嬢や、新人嬢となると状況が変わってくる。

寝泊まりする風俗嬢たちで待機所はすし詰めに

「お客さんよりも待機してる女のコのほうが多くて、この2週間は一日スマホいじって終わる日がほとんですね」

現役デリヘル嬢の伊藤えりなさん(仮名・24歳)は、歌舞伎町の待機所近くのカフェで深刻な表情でコロナ禍の勤務状況をそう打ち明けた。

中部地方の地方都市で生まれ育ち、高校卒業後上京。介護職の専門学校に通い、昨年埼玉県の民間施設の介護職員として働き始めたが、収入が少ないことと、多忙ゆえに身体を壊し退職。「収入が高いし、時間が自由」ということでデリヘル嬢を始めたのが昨年9月のことだ。

「でも、まともに稼げたのは半年もなかったです。稼げてた時期は鬼出勤して月収も100万円近くいきましたが、3月半ばに収入が20万を切って、今月(※4月)は家賃も払えてません。家に帰ると交通費とか電気代とかがかかるから、待機所で寝泊まりしています」

えりなさんのように、待機所暮らしをしている女性は多く、現在彼女の職場では10人ほどのデリヘル嬢が待機所で生活しているという。

「ベッドもないので、床で寝て、起きて指名が入ったら出勤してってかんじです」