前代未聞、EUで創設される90兆円の復興基金

アフターコロナの経済復興を後押しすべく、欧州連合(EU)では「復興基金(Recovery Fund)」を創設しようという構想がある。4月23日に開催されたEU首脳会議では復興基金の規模が1兆~2兆ユーロ(約120兆~240兆円)程度になるとされたが、一部報道によると総額7500億ユーロ(約90兆円)で調整が進んでいる模様だ。

2020年5月26日、ベルギー・ブリュッセルで記者会見する欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)
写真=AFP/時事通信フォト
2020年5月26日、ベルギー・ブリュッセルで記者会見する欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)

これまでの情報を総合すると、独仏が5000億ユーロを拠出、この額が各国に贈与の形で配布される。また残りの2500億ユーロに関しては、EUが金融市場から借り入れ、その分は貸付という形式が採られるようだ。各国の経済規模や景気後退の度合いを考慮し、適切な額の財政支援が贈与と貸付を組み合わせる形で行われることにポイントがある。

当初の構想から萎んだとはいえ、EUとしてこれだけの規模の経済対策を実施することは前代未聞である。それだけコロナ禍は欧州経済、特に感染の拡大が深刻なイタリアやスペインなどの南欧経済に甚大な悪影響を与えている。返済の必要がない贈与の道が開かれたという点からも、EU、特に独仏という二大国の危機感の強さがうかがえる。

またEUが金融市場で借り入れを行うことは、長年の課題である財政の一元化という論点から考えても、非常に意義深いことである。近年、この課題に関しては、議論こそされてはいたものの、具体的な進展はほとんど見られなかった。コロナ禍が後押しとなる形で、将来的な財政の一元化に向けた動きが図らずも一歩前進したことになる。