コロナでeスポーツの大会が延期・中止に

FIFAを本格的に始めて5年目。大学生との二足のわらじのため、日々の練習にそう多くの時間は割けない。

「大会直前でなければ平日は1~2時間程度。さらに土日を使って30試合ほど集中的にプレーしています。実力の近い旧知の選手に前もって連絡を取ってから対戦したり、ゲーム内のマッチング機能を使ってネット経由で同レベルのプレーヤーを探し、初めての相手といきなり試合を行うことも」

ナスリ選手はすでに世界のトップレベルに数えられる存在だ。
ナスリ選手はすでに世界のトップレベルに数えられる存在だ。(写真提供=鹿島アントラーズ)

すでに世界のトップレベルに数えられる存在のナスリだが、鹿島に移籍して新たな環境を得た今季は、さらにもう一段上のステージに上がる勝負の年になるはずだった。実際、1月に出場した世界ツアー戦「グローバルシリーズ」のアトランタ大会ではベスト16入りし、上々のスタートを切っていた。

ところが、その直後から始まった新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、リアルなスポーツだけでなくeスポーツにも大きな影響を及ぼした。鹿島のホーム試合と組み合わせて行われる予定だったサポーターへのナスリのお披露目はおあずけとなり、国内外のFIFA公式戦も軒並み延期、もしくは中止になってしまった。

「世界ツアー戦はシーズンが8月初旬に終わるので、このまま中止になる確率が高いと思います。(昨年出場した)eW杯もたぶん……」

「SAMURAI BLUE」で試合をするはずだったのに……

本来であれば4月、5月は海外や日本の各都市を股にかけ、毎週転戦しているはずだったのだが、すべて白紙に。

中でも彼が残念に思っているのが、二人一組となった代表チーム同士の国別対抗戦『FIFA eネーションズカップ2020』の、日本代表選考会の中止だ。国際サッカー連盟が主催するこの大会に、日本サッカー協会は今年初めて代表チームを送り込むことを決めていた。リアルなサッカーの男子代表「SAMURAI BLUE」や女子代表「なでしこジャパン」などと同格のカテゴリーとして「サッカーe日本代表」を新設し、選ばれた選手は国際大会でおなじみの代表シャツを着て戦うことになっていたのだ。

サッカー界ではeスポーツがトレンドになっている。
写真提供=鹿島アントラーズ
サッカー界ではeスポーツがトレンドになっている。

「もちろん、選考会には出場するつもりでした。初代日本代表として、あの青いユニフォームにぜひ袖を通してみたかったんですが……」

そして5月にデンマークでの開催が予定されていたeネーションズカップ本大会も、開催のめどが立っていない。ナスリは鹿島の、また日本代表の所属選手として、世界の舞台で名を残す機会を失ってしまった。