プロゲーマーも家にこもってトレーニング

「このところ正直、トレーニングに向かおうって気持ちをなかなか持てなくて……」

4月初旬の時点での彼の言葉だ。しかしプロとして、まったく練習をしないわけにもいかない。

「だから遊びの要素を入れてでもFIFAと向き合い続けて、なんとか日々のモチベーションを保つようにしています」

遊びの要素、とはこういうことだ。

「僕が好きなマンチェスター・シティの何年か前の試合映像を見て、当時所属していたランパードやボアテングなんて選手のことを『いたよなー』って思い出すんです。で、そうした懐かしい選手を、FIFAの自分のチームの中で使ってみる。だからといって決して戦力アップになるわけではないんですが、逆にそれがいとおしかったりするんですよ」

失意の中、そうやって細々と情熱の炎を灯し続けていた彼に突然、朗報がもたらされる。

日本サッカー協会はサッカーe日本代表選考会の中止を受け、2月27日時点でのFIFAの世界ランクにおける日本人最上位者を代表とするとし、その結果、ナスリが選出されたのだ。

岡崎慎司とコンビを組み実戦へ

さらに延期が濃厚なeネーションズカップ本大会とは別に、アジア4つの国、地域による国際親善大会「StayAndPlay eFriendlies」の開催が発表され、日本代表で現在はスペインのウエスカでプレーする岡崎慎司選手とのコンビで、ナスリがe日本代表として初の実戦に臨むことになったのである。

この大会は、家の中でもサッカーを楽しんでもらおうという趣旨のもと、4月24日からの4日間にわたり、日本、マレーシア、チャイニーズ・タイペイ、シンガポールの総当たりで争われた。各国のeスポーツ・サッカー代表選手と現役サッカー選手が代表チームを結成し、完全リモート環境で相手国とそれぞれオンライン対戦を行い、2試合の合計得点で雌雄を決するというもので、大会当日、岡崎はスペインの自宅から参戦した。

そして日本の自宅から参加のナスリは、日本サッカー協会から支給された憧れの代表シャツを身にまとっていた。

「日本のユニフォームを着ての出場は、気が引き締まりましたね。しかも岡崎選手と同じチームでの出場ですから、これまでの大会とは全然違う緊張感がありました」