なかなか決められない管理職たち

【木村】ただ先ほども言ったように、与えられた問いを“解く”だけの役割に慣れてしまっているので、「自分で決める」という意識・能力が必ずしも備わっていません。決められない管理職がよく使う言い訳があるんですよ。それは「情報がないから判断できない」。それで部下に対して「これでは足りないから、もっと情報を揃えろ」と言うのです。

もちろん確かに判断材料が少なすぎるケースもありますが、多くの場合は単に決めたくないだけ。この言い訳をして、判断を先送りするのが一番ラクですから。そもそも情報がすべてそろっている段階では“決める”とは言わない。もはや完全情報下では、人間よりAIの方が精度が高いわけですから。つまり情報が十分に揃っていない・不確実な状態で果敢に“決める”ことこそが、リーダーとしての意思決定力です。その場合、すべての判断が正しいとは限らない、場合によっては失敗もあり得ますが、そのリスクをとることこそ、意思決定の本質だと思います。

「覚悟を持って決める」ことが大事

【柳川】もともと日本の会社は、「誰が決めているのかわからない」と言われることが多いですね。フォーマルな意思決定の主体はあっても、実はそこで決めることは少なくて、その前に根回しという名のもとに全体の意見が取りまとめられ、結局は誰が決めているのかわからないまま会社としての意思が決まっていくことが大半ではないでしょうか。

木村さんが指摘したように、白地に絵を描くために何かを決めることはもちろん重要ですが、まずはそれ以前に「自分に与えられた権限の範囲で決めるべきことは覚悟を持って決めましょう」ということだと思います。本来なら管理職である自分の意思決定範囲内の案件であっても、上にお伺いを立てて判断を仰いだり、部下に決めさせてしまったりする人も多いのですが、決めるべき人が決めるべきタイミングで決めてこそ、組織全体で適切な意思決定がなされるはず。それができればもう少し状況が良くなる日本の会社は多いように思います。