化粧品の通販会社、JIMOSはコミュニケーター(オペレーター)の質が高いことで知られる。福岡にある同社のコンタクトセンターは、一般的なコールセンターとは風景が違う。まず、全員、ユニホームを着ている。11年前の創業時から制服で電話応答をしているのだ。きちんとした制服を着ると「気合が入り、背筋が伸びる」らしい。会社が一方的に決めたものではなく、従業員がデザインに参加して作ったものだから、コミュニケーターたちは、大事に扱っている。
壁には、手づくりの標語やイラストが飾ってある。「売り上げ倍増、必達!」などと、精神主義の言葉が並んでいるわけではない。花畑をかたどったイラストが貼ってあり、目標を達成すると、花を一輪、描き足すような、ユルイ感じの成績表だ。
毎朝行われる、15分間の朝礼でも遊びの工夫が見られる。商品への思い入れをリレー形式でスピーチしたり、きらきら輝いている仲間に対しての表彰があったり……。朝礼はコミュニケーターたちの拍手と笑いでいっぱいだ。
社長の細田洋平氏はこう語る。
「私どもは顧客との応答に、ひと手間もふた手間もかけています。時に、非効率と言われるくらいです。それはコストのかかることかもしれません。しかし、効率ばかり追求して、コミュニケーターが不機嫌になり、無機質に応答するのは、かえってよくないのです」
目先の数字を追うのでなく、顧客満足度を高めることが売り上げにつながると信じているようだ。
JIMOSの社員たちは昨年から、節電などで社内のコスト削減に努め、捻出した金額を、1万3087本のワクチンにして途上国へ送った。企業の存続には社会からの好意が不可欠だ。これからの企業は数字や効率を追うだけでなく、奉仕、献身といった気持ちを忘れてはいけないのではないだろうか。
(松隈直樹=撮影)