「もうひとりの自分」をつくる

メタ認知とは、「自分」という存在を俯瞰して見る「もうひとりの自分」をつくることです。

ロールプレイングゲームで考えてみましょう。

ゲームを始めてすぐ、主人公に名前をつけることになります。ここでは便宜的に、自分の名前をつけることにしましょう。私の場合は「のぶなが」です。

ほどなくして「のぶなが」は、冒険の旅に出ます。旅の途中ではさまざまなモンスターが登場し、「のぶなが」に戦いを仕掛けます。

戦いの中で、「のぶなが」は敵の攻撃を食らい、ダメージを受けます。しかしゲームをしている私・現実の信長はダメージを受けません。どうすれば「のぶなが」が窮地を脱し、戦いを逆転できるかに思いを巡らせます。

メタ認知も、これに近い考え方です。

「誰かに話しかける自分」とともに、「その自分を俯瞰して見る、もうひとりの自分」をつくる。そして仮に相手に拒絶されたとしても、それは「自分」そのものが否定されたのではなく、「そのときの自分の話し方」が悪かったのだと考えるのです。

すると、「自分の人間性が否定された」と絶望することなく、「行動をどう改善すれば相手に受け入れてもらえるのだろう」と、前向きに修正策を練ることができるようになります。

「自分」を俯瞰して見る「もうひとりの自分」という視点を持つと、あらゆる批判や助言を前向きにとらえることができるようになります。加えて、思い切った行動もとれるようになります。

人生をゲームのように考えてみる

ホストクラブに入りたてのころの私は、無駄にプライドが高く、お客さまを盛り上げるためにバカを演じることができませんでした。

しかし「メタ認知」の考え方を取り入れることで、「バカを演じる信長」と「それを俯瞰して見るもうひとりの信長」、2つの視点を持てるようになりました。

「バカを演じる」のは、ロールプレイングゲーム風にいえば、「バカを演じる」という魔法が有効な状況で、その魔法を使うようなもの。そう考えると、お客さまのために一時的にハメを外すことにも抵抗がなくなったのです。

確かに、人生はゲームではありません。ただ「ゲームのように考える」ことで心が軽くなり、「自分」が守られるのもまた、心理学的に正しいことなのです。