危機の際に不安を持たない人はいない。よって有事には頻繁に具体的な情報を示し、朝の来ない夜はないことを訴えかけることこそがリーダーの責務である。これがリーダーに不可欠な「言語的説得」である。いち早く鎖国状態を決め、コロナの封じ込め政策をとったニュージーランドのアーダーン首相も、自らの言葉で言語的説得を行い、国民のコロナを乗りこえるための効力感を培うことに成功しているのは述べた通りだ。

なぜ、彼女たちはここまでできるのか

なぜ、女性リーダーたちは国民の効力感をうまく育てることができたのか。強いて言えば、彼女たちには研ぎ澄まさざるを得なかった鑑識眼があったことだろう。

依然として全体の中の少数派である女性リーダーにとっては、正しい情報源、真のプロや専門家を見つけて味方にすることが、圧倒的多数派の男性と互角にやり合い生き残るために不可欠だ。

先を見通し優先順位を決めるためには、多くの情報を集めることが必要である。権力者の周りには有象無象に私利私欲、もしくは純粋な厚意で人が大勢群がる。その中で誰が正しい情報を持ち、誰がどの分野において本物のプロなのかを見つけだす鑑識眼を持ち、迅速に選択し対応することがキャリアの明暗を分ける。

女性リーダーは鑑識眼を磨かなければ生き残れない環境を生き抜いてきた。その経験が今回のコロナ対応で適切なプロを選び、対応を任せ、自らも先頭に立って国民に働きかけ、結果的にはうまくコロナの感染拡大を押さえ込むことにつながった。

指示が曖昧で、クレームが出ると「誤解だ」と逃げる日本

一方で、わが国の現状を分析すると、国民の効力感の発生を意図的に抑え込んでいる気さえする。国民に対し、どうすれば戦いに勝てるのかの具体的な絵図を示し、一つ一つ数値でブレークダウンして何をやるべきかを示し、達成の協力を求めるべきが、根拠を明示しないまま「つらいお気持ちは分かります」「~をお願いしたい」といった情緒的な言語的説得にのみ終始している。

具体的な指示を出したつもりが、曖昧でクレームが噴出すると「誤解だ」といって逃げる。これでは国民に効力感なぞ発生しない。

未知のウイルスとの戦いであるので、その対応については試行錯誤をすること、朝令暮改になることは避けられないし、恐れてはいけない。一方で、人々が目に見えないコロナへ対峙する際の成功体験を得るには、目に見える数値の達成が不可欠である。毎日の小さな成功体験を繰り返すことで長い我慢のロードを歩くことができる。我慢のロードには金銭的な保障が必須であることは明白だが。

もちろん、言葉による説得は必要である。しかし、口先だけでは最初は効力感に作用するかもしれないが、国民にそう長くは効かない。成功体験がないと「どうせ口だけなんだろう」ということを学習し、予測してしまうからである。言語的説得は、成功体験とセットになった時に最も効力感が醸成される。