世界の歴史を紐解くと、感染症の流行がたびたび社会を大きく変えてきたことがわかる。著者の池上彰氏と増田ユリヤ氏は「新型コロナウイルスの感染が拡大している今も、安倍政権の政策によっては大きく社会が変わる可能性がある」という――。

※本稿は、池上彰、増田ユリヤ『感染症対人類の世界史』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

奈良の大仏東大寺
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平清盛は「日宋貿易による感染症」で亡くなった

【池上】平清盛はマラリアで亡くなったのではないかと言われているそうですね。

【増田】1181年に亡くなっていますが、そういう説があります。

【池上】これは日宋貿易の影響だったのではないかとのことですが。

【増田】宋、つまり中国との貿易が盛んになって、人の行き来も多くなります。当然、感染症もやってくるわけですね。

【池上】どういったものが輸出入されたんでしたっけ?

【増田】日本からは刀剣や砂金、水銀や硫黄、陶器や扇などが輸出されています。宋からは陶磁器や織物、典籍、つまり書籍ですね、あとは医薬品や銅銭などが輸入されました。

【池上】あっ、宋銭ですね。

【増田】宋銭は大量に輸入されて、日本の貨幣経済の発展に貢献します。

【池上】なるほど。日本は中国の貨幣で売買していたんですよね。やはり交易には、いろいろな面がありますね。それ以前にも中国との行き来はありましたから、当然、感染症の問題もあったんですよね。

【増田】奈良時代に、日本でも天然痘の大流行がありました。八世紀、七三五年から七三七年にかけての出来事で、天平の大疫病と呼ばれています。