「正解」を出せればいい、そんな時代は終わった
しかし、今はVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性の頭文字を取った言葉)と呼ばれる時代です。
この変化が激しい時代では、問題そのものの定義や発見が難しくなっています。解くべき課題や問題が日々更新されているため、ある時の「正解」が数年、いや数か月単位で「正解」でなくなってしまってもおかしくはありません。
冒頭の方々の感じている物足りなさの原因はここにあります。問題そのものの更新をせずに「正解」を出したところで意味が無くなっているのにもかかわらず、今もなお「正解」を出すメソッドである論理思考を続ける。
それにより出てきたアウトプットは、いわゆる「芯を食っていない(的外れで・凡庸な)」ものになり、見向きもされずに葬り去られてしまいます。
それでも、論理思考で導き出した打ち手において、生まれ備わったセンスによってうまく差をつけられる人は中にはいると思います。ただ、そのような人はごく一部です。ここにビジネスパーソンが今、感じている壁が隠されていると私は考えています。
時代は、MBA(経営学修士)からMFA(美術学修士)へ
実は、世界、特にアメリカに目を向ければ、2000年代にはすでにこの問題は指摘されていました。
2005年にアメリカで出版され、世界的ベストセラーとなった書籍『ハイ・コンセプト』において、著者であるダニエル・ピンクは、これからの時代は「MBAからMFAへ」と主張しています。
論理思考を代表とする「左脳的思考」を持つMBA(Master of Business Administration/経営学修士)人材よりも、デザインスクールが提供するMFA(Master of Fine Art/美術学修士)人材の方がビジネス上の価値が高まっていることを実例とともに紹介し、ビジネスパーソンが今後、右脳的思考を身に付けることの重要性を説いています。
ちなみに、私自身もこの『ハイ・コンセプト』を読んだことがきっかけで、当時考えていたMBA留学から方針転換をし、デザインスクールへの留学を選びました。『ハイ・コンセプト』では、これからの時代に必要な右脳的資質の一つに「デザイン」が挙げられています。
デザインと言われるとビジネスと関係ないように思われますが、Airbnb共同創業者ブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアの2人やダイソンの創業者など、いま世界を動かすビジネスエリートたちがデザインスクール出身であることからも、デザインの力がいかに強烈なのかは見てとれます。