非常事態に強い小池百合子

総理は厚生労働省クラスター対策班の分析に基づき目標値を掲げたが、政府の専門家会議で副座長を務める尾身茂氏は削減効果について「8割であれば2週間、7割であれば2カ月以上かかる」としている。つまり、期間内に「8割削減」を達成できれば感染者は減少に向かうが、「7割削減」にとどまれば期限を超えて追加の対策が必要となるということだ。すでに「自粛疲れ」も見え始める中、さらに緊急事態宣言の期間が延長されれば経済的打撃は計り知れない。では、そのときに日本はどうすれば良いのか。

そこで、非常事態下の強いリーダーとして「再評価」の動きが見られているのが、小池百合子都知事だ。小池氏は3月23日の記者会見で「今後の推移によっては、都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置をとらざるを得ない状況が出てくる可能性がある。そのことを何としても避けなければならない」と発言し、感染拡大防止への協力を呼び掛けた。

田崎史郎氏の"安倍擁護"発言

米国や英国など欧米を中心にとられている「ロックダウン」という用語を用いたことに対しては、前都知事の舛添要一氏が「ロックダウンなどという言葉を軽々に使ってパニックをあおってはならない」「都市封鎖も緊急事態宣言も必要ないと私は思う」と批判。元経済産業省官僚の岸博幸氏も「ロックダウンで大変になるかもしれないって世の人を驚かしたのは、まさに小池さん。緊急事態宣言=ロックダウンだ、みたいな印象になっちゃったのは残念な気がする」と指摘し、ワイドショーをはじめ各メディアは猛批判を展開した。

安倍政権に近い政治評論家の田崎史郎氏にいたっては、総理が緊急事態宣言を発令した時期が「遅すぎる」との回答が7割に上った世論調査結果を受けて「小池さんのロックダウン発言があったんで、これに次いでやるとパニックになってしまうんじゃないかと。さまざまなことを考えながら(政権は)やっていたんですね」と責任転嫁して見せたほどだ。相変わらずの田崎氏の安倍擁護である。毎回のウルトラCな擁護話法にもはや感心してしまう。

メディアも、厚労省も、もっと危機感を持ってほしい

ちなみに、この「ロックダウン」をはじめ、オーバーシュート(爆発的感染者急増)やクラスター(感染者集団)、パンデミック(世界的な大流行)などの言葉は、小池氏が初めて用いたものではない。少しでも公表されている資料を調べればわかることだが、小池氏が記者会見で発した4日前の3月19日、政府の専門家会議は大多数の国民や事業者が努力を続けていかなければオーバーシュートが起こりかねないと分析したうえで、次のように提言していた。

「そうした事態が生じた場合には、その時点で取り得る政策的な選択肢は、我が国でも、幾つかの国で実施されているロックダウンに類する措置を講じる以外にほとんどない、ということも、国民の皆様にあらかじめ、ご理解いただいておく必要があります」。つまり、小池氏は専門家会議の提言に基づいて「あらかじめ」言及し、情報公開したにすぎない。むしろ、ロックダウンの可能性についての専門家による提言の重要部分に触れなかった政府やメディア、評論家は無責任だったのではないか。コロナ危機下のデマや誤発信が問題になっているが、メディアはこうしたときこそ事実にこだわるべきだろう。同様に、政府は厚労省クラスター対策班が地域ごとの感染者数の予測をしていながら、対象自治体には「非公表」とすることを指示しており、政府の責任で国民に積極的な情報開示をしてこなかった姿勢には疑問が残る。