マスクがなかなか買えない現象を説明する家庭内在庫
それにしても、なぜマスクはいつまで待っても「レアアイテム」であり続けるのでしょうか。その理由は国内のマスク生産量の少なさと、家庭内在庫という概念、買い占め行為の3つで説明することができます。
そもそも、国内のマスクは多くを海外からの輸入に依存している状況でした。日本衛生材料工業連合会によると、2018年のマスクの海外輸入数量は約80%です。今は世界的にマスクの品薄状態が続いていますから、国外で生産されたマスクが積極的に日本に入ってくる状況ではないのは明らかではないでしょうか。
また、マスクは「必要なときに必要なだけ」買う生鮮食品などと異なり、家庭内在庫という概念があります。マスクは置き場所に困るサイズではなく、また時間が経過することで直ちに品質を損なうものでもありません。そのため、特に今のような有事の際にはストックとして買いためておく人が多くなり、一家庭あたりのマスク保有枚数が高まり、その分多くの人の手に行き渡らなくなるのです。
国民が一人2箱買うなら120億枚も必要になる…
仮にマスクは1箱50枚程度入っているものとします。日本の人口は約1億2000万人なので、一人あたり1箱手に入れようとすると、必要なマスクは60億枚、「品薄なので、念のために2箱持っておく」と考えると120億枚必要になります。そのため、シャープが工場のクリーンルームを稼働して、数万、数十万枚と生産してもこの圧倒的な需要の量に応じる枚数を用意できていないのです。
さらに店頭販売での買い占め行為が起きている現状も、全国民にマスクが行き渡らない原因になっています。マスクの購入を求めて、真夜中から行列をつくり、店頭に座り込む人まで出ています。なるべく多くの人に行き渡るよう、店舗によっては購入制限を設けていても、同じ人が何度もレジに並んで買い直しをするなどの不正が横行しており、小売店もその対応に苦慮しているのです。
このような複合的な要因によって、日本の全国民にマスクが行き渡らない状況が続いているのです。