2000万人超が調査に協力した奇蹟
この調査はどのメディアでも比較的好意的に受け取られている。それもあってか、厚労省はLINEとの連携を強化し、4月13日からは海外から帰国した人への健康調査にもLINEの機能を使うと発表。日本が入国を拒否している73の国と地域から帰国した国民のうち、PCR検査で陰性と確認され検疫所などで同意した人を対象に、帰国から2週間、毎日LINEでメッセージを送り、発熱やせきなどの症状の有無を聞き取るという。
それまでは居住地の保健所の職員が2週間、毎日直接電話していたというから、LINEで手軽に確認できるとなれば担当職員も帰国者もどちらの負担も軽くなることは間違いない。
通常であれば政府に自身の健康状態や職業などの情報を、個人が特定されない形とはいえ把握されることに抵抗感を持つ人もいるだろう。また、ツールとして使い勝手がいいからとはいえ、行政機関が一民間企業の提供するサービスにまる乗りしていいのかという疑問もわく。しかし今般は非常時ということもあり、2000万人を超える人々が調査に協力したことの意味は大きい。
既存の大手メディアやマスコミは後塵を拝した
もちろん課題もある。筆者の母はLINEを使っていないため、この調査には参加できなかった。厚労省も回答者の属性や調査自体の偏りを考慮する必要があるとしたうえで、〈本調査はLINEユーザーのみを対象としていること、重症者は回答しづらいこと、感染症予防の意識が高い人ほど回答する傾向にあること〉などを可能性として指摘している。国民の了解を得て行う民間が提供するツールでの調査では、どうしてもこうした偏りが出るのは否めない。
それでも、厚労省の特設サイトなどに誘導してのアンケート形式であれば、これほど多くの回答は得られなかったのではないかと思われる。LINEという平素から利用している身近なツールに、政府(厚労省)の側から歩み寄ったことが奏功し、短時間に収集、分析可能なデータが集まった。
さらにこの結果を地図上に示し視覚的に見やすい形に落とし込んだジャッグジャパンの「都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ(LINE調査視覚化)」が登場するなど、実態把握や分析において、いわゆるデジタル分野に強い企業の活躍が目立つ。本来ならこうしたことに長けているであろう既存の大手メディアやマスコミは後塵を拝し、後追いで厚労省とLINEが提携する取り組みと結果を報じるにとどまった。