ブランデーやコニャックでは駄目なのか
では、同じ蒸留酒であるブランデーやコニャックと比べた場合はどうでしょうか。
先述の「Lオークション」では、世界を代表する高級コニャック「レミーマルタン ルイ13世」をはじめ、ブランデーやコニャックも多数出品され、同日に出品されたウイスキーよりも、はるかにお買い得な価格で落札されていました。思わず私も落札したいと思ったほどです。
以前、「レミーマルタン ルイ13世」の生産現場を取材したことがあります。熟成庫には、50年から100年以上前につくられた原酒がたくさんありました。その原酒を400種類以上アッサンブラージュ(ブレンド)したものが「レミーマルタン ルイ13世」です。原酒の古さという点では、ほとんどのウイスキーがかないません。
それにもかかわらず、オークションでの落札価格はウイスキーのほうがはるかに高くなります。この理由は、「希少性」の違いにあるのではないかと私は考えています。
シングルモルト、シングルカスクの「希少性」
コニャックは、言わば「アッサンブラージュの芸術」です。アッサンブラージュすることで、同じ銘柄であれば、どの年に瓶詰めされたものも同じ味になるようつくられています。「レミーマルタン ルイ13世」を名乗る限りは、2000年に瓶詰めされたものでも、2020年に瓶詰めされたものでも、同じ味でなくてはなりません。
これとよく似ているのがブレンデッドウイスキーです。ブレンデッドは複数の蒸留所の原酒を混ぜることで同じ味をつくり出します。その一方で、ウイスキーには「シングルモルト」「シングルカスク」というジャンルがあります。シングルモルトは、単一の蒸留所の原酒のみを瓶詰めしたものです。シングルカスクは、単一の蒸留所の一つのカスク(樽)の原酒だけを瓶詰めしたものです。
シングルモルトも原酒を混ぜ合わせてはいますが、ウイスキーはブランデーやコニャックよりもレギュレーションが多様で、なおかつ、世界各国でつくられているため、多くのバリエーションが存在します。バリエーションが多くなるということは、母数が大きくなるということですから、一つ一つのシングルモルトの希少性は高くなります。