それではコリンが含まれている食品は何? と答えが知りたくなるに違いない。あらゆる食品で最も多くコリンが含まれているのは「卵」で、100グラムあたり294ミリグラムだ。ちなみに米国では1日に男性550ミリグラム、女性425ミリグラムのコリン摂取が推奨されている。

また、コリンに脂肪酸が結合すると「レシチン」という成分になり、これも脳にとてもよい。レシチンが欠乏するとイライラして、神経衰弱を招き、反対にレシチンを十分に取ると集中力、思考力、記憶力などがよくなる。

「レシチンは細胞膜の主成分で、脳神経や神経組織を構成します」と話すのは、平成横浜病院の東丸貴信医師だ。

「レシチンは大豆レシチンと卵黄レシチンの2種類があり、その名の通り大豆レシチンは大豆や大豆製品、卵黄レシチンは卵黄に多く含まれています」

つまり、大豆や卵はレシチンやコリンが十分に含まれ、優秀な頭脳食といえよう。もちろん大豆加工食品である味噌、醤油、豆腐、納豆などもOK。板倉医師は子供の頃からよく「卵」を食べていたと言う。

「卵かけご飯を食べたり、たっぷりの肉や野菜を入れたすき焼きをドバッと卵につけて食べていました」

そう、実は抗酸化作用のある「野菜」も脳の老化抑制に働く。どんな野菜や果物でもいいが、とりわけトマトにはリコピンやβカロテンといった抗酸化物質のほか、脳細胞を活性化するγアミノ酪酸(略称GABA)も豊富でお勧めだ。GABAは神経の高ぶりを抑え、降圧作用がある。つまりは脳への血流の流れをよくするのだ。

「抗酸化作用が高く、GABAが含まれるという点で緑茶もいいでしょう。実はせっかく脳によいと摂取したレシチンも胃腸で酸化されると、体に悪影響を与えるという報告があります。ですからレシチンを含む成分と一緒に、抗酸化作用のある食品を取ることも大切ですね」(板倉医師)

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ここでもう1つ、近年の研究で明らかになりつつある脳にまつわる新情報をお伝えしよう。ストレスが続くと下痢が起きるように、これまでは脳からの指令で腸が動くと考えられてきたが、反対に腸からも脳に影響を与えることがわかってきた。これを「脳腸相関」という。勉強によるストレスなどで腸内環境が乱れて下痢や便秘に傾くと、ストレスが増大するという悪循環に陥るのだ。

さらには腸内環境が悪いと脳内のアセチルコリンが減少し、認知症を引き起こしたり、うつ病などの精神疾患を発症する可能性も指摘されている。どのような腸内環境だと病を発症するリスクが上がるのかについては研究中だが、不調を感じない程度に「便通を整えること」が“脳のストレス”を減らすことになるのは間違いない。