自信がないと公言できない海軍、主張を変えられない陸軍……
想定される対米英戦争の重圧に苦しむ武藤や東条は、海軍が対米戦に自信がなく、それゆえ交渉継続を主張しているのを承知していた。そこで海軍側に戦争に自信なしと公式に明言させ、できれば開戦を回避したいと考えていたようである。
だが、海軍も組織内外の条件から、それは一貫して避けていた。及川海相は東条に対米戦の自信はないと自身の考えをもらしていたが、それは内々の話とされていた。したがって、東条も陸軍内外で、それを理由に従来の主張を変えるわけにはいかなかったと思われる。