さらに言うと、安倍さんは一斉休校を萩生田文科相や菅官房長官にも相談しなかった。何も聞いていなかった萩生田さんは安倍さんのところに押しかけて文句を言った。たった1~2日でも、このように新たな展開が次から次に出てくるので、それを台本に書き加えるわけです。

クロスファイア番組台本●収録前の打ち合わせで書き込んだメモで埋め尽くされた番組台本。「自分がわかればいい」というメモはカタカナが多用されており、他人には判別不可能な部分もある。
クロスファイア番組台本●収録前の打ち合わせで書き込んだメモで埋め尽くされた番組台本。「自分がわかればいい」というメモはカタカナが多用されており、他人には判別不可能な部分もある。

20年3月8日の放送では、自民党の石破さんに話を聞きました。20年3月4日に、安倍さんと枝野さんが党首会談をやった。そのときはまだ立憲民主党は新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正に反対でした。ところが20年3月5日になったら急に賛成に回った。これはなぜなんだと聞きました。

いま台本を見ると、この話は、「ヤトーゴーイ」(野党合意)とメモしています。カタカナなのは、単純に漢字を書くより速いから。どうせ僕しか見ないから、自分さえ読めればいいんです。

準備ができたら局に入って、プロデューサーたちと最後の打ち合わせをします。メモしてきた中身を話して、問題がなければ最新情報を織り込み、「いや、田原さん、元のほうがいい」というなら最初の台本のままやります。

メモをするのは、あくまでも番組で使うためです。そういう意味では、備忘録としてのメモではなく、台本づくりに近いですね。

インタビューや対談の前にも、自分でざっくりした台本をつくります。事前に資料を読み込んで、「まずはこれについて尋ねよう」「ここを突っ込んで聞いてみたい」と、B5のコピー用紙に書いていきます。

先日は、AV女優で作家の紗倉まなさんと対談しました。もちろん事前に彼女の小説『春、死なん』を読みました。コピー用紙には、紗倉さんへの質問をはじめ、対談中にいつでも参照できるように、気になった箇所のページ番号も書いておきました。ケースバイケースですが、1時間のインタビューや対談だと、だいたいコピー用紙5~6枚の分量になることが多いですね。

紗倉まなさんへの取材台本●取材の際は、事前に情報をまとめた台本を持っていくという。聞いたことをメモするのではなく、聞きたいことをあらかじめメモしてから取材に向かう。
紗倉まなさんへの取材台本●取材の際は、事前に情報をまとめた台本を持っていくという。聞いたことをメモするのではなく、聞きたいことをあらかじめメモしてから取材に向かう。

取材が終わったらメモは捨てる

インタビュー中はメモを取りません。意図的に取らないというより、真剣勝負だからそんな余裕がないんです。『クロスファイア』もそうですね。本番中にメモを取るのは、『朝まで生テレビ!』やシンポジウムのような長丁場のときだけ。何か疑問が浮かんだものの、流れでその瞬間に聞けないときにメモを書き、あとで質問します。

本番がまったく想定していない流れになることもありますよ。元に戻さないほうが面白いと思ったら、事前に準備してきたものをばっさり捨てます。もったいないとは思いません。台本と違う方向に行ったときのほうが面白いから、むしろありがたいくらいです。

本番が終わったら、台本やコピー用紙は捨てます。今回の新型コロナ問題のように継続的に取り上げるテーマについてはしばらく残しますが、それ以外は処分します。取材した内容は雑誌や書籍で活字にしているから、メモの状態で残す必要がない。